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安倍首相“働き方改革”一歩後退、影響は?

2018年3月1日 18:06
安倍首相“働き方改革”一歩後退、影響は?

働き方改革で安倍首相が一歩後退。安倍首相は、柱の一つだった裁量労働制の拡大を法案から切り離し、今国会での成立を断念した。

■判断の背景には何が?

この判断の背景にあったのは、国民の批判に対する危機感にほかならない。

長時間労働による過労死が社会問題となる中で、厚生労働省のデータはあまりにずさんで、これを用いて説明してきた裁量労働制の拡大はとても理解されないと判断したもの。自民党内には、国民的な批判が巻き起こった「消えた年金問題の時のようだ」との声も出ていた。

また、9月に自民党総裁選挙も控える中で、波乱要因を減らしたいという思惑もあるとみられる。

■“目玉法案”後退で、政権に痛手も

ただ、今国会最大の目玉法案で後退を余儀なくされたことは、痛手だ。自民党内からは「働き方改革のバランスが崩れた」などと安倍首相の判断を批判する声も上がっている。

というのは、法案は、労働者側が求めている罰則付きの長時間労働の規制などと経営者側が求めている裁量労働制の拡大を、いわば抱き合わせてバランスを取っていたからだ。経営者側は早速、反発している。

日本商工会議所・三村明夫会頭「労働者も会社も全体として、労働者の生産性を高めるという方向にいくというのが当たり前のことだと思っておりましたので、先延ばしと、こういうことは残念であります」

■野党は攻勢強める

一方、野党側は攻勢を強めている。1日はさらに、高収入の一部の専門職を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の創設も法案から切り離すべきだと追及した。

民進党・吉川議員「政策の異なる法案を束ねて一緒に出してくることにつながりますので、この際、裁量労働制の削除と合わせて、高度プロフェッショナル制度の導入も(法案から)外して、立法府たる国会に提出すべきではないかと」

安倍首相「いずれも健康を確保しつつ、誰もが事情に応じた多様な働き方を自由に選択することを可能とすることで、その能力を発揮できる労働制度への改革という一つの趣旨、目的を持つものであり、一つの法案でお示しをすることが適当と考えているところでございます」

安倍首相は「高度プロフェッショナル制度」を含む法案を今国会で成立させる方針だが、自民党内にも法案の行方を懸念する声が上がっている。安倍首相の求心力にも影響する可能性が出てきている。