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名護市長選 与党、熾烈な“総力戦”の裏側

2018年2月5日 20:16
名護市長選 与党、熾烈な“総力戦”の裏側

アメリカ軍普天間基地の移設の是非が争点となっていた沖縄県の名護市長選挙で、政府・与党が支援した渡具知武豊氏が現職を破って勝利した。移設推進を目指して総力戦で臨んだ政府・与党、その熾烈な選挙戦の裏側を取材した。

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4日に行われた名護市長選挙で、自民党などが推薦した渡具知氏が現職の稲嶺市長を破った。普天間基地の辺野古への移設を進めたい安倍政権と、移設阻止を掲げる翁長知事の“代理戦争”。与党系の市長誕生は8年ぶりだ。

政府・与党が総力を挙げて臨んだ今回の選挙。選挙戦で繰り返し強調したのは「与党系の候補が勝てば、地元経済は良くなる」という点だった。与党側はこの激戦をどう制したのだろうか。

◆投票後に回される“紙”の正体は─

先週、名護市内の投票所には、期日前の投票をするため多くの有権者が訪れていた。さらに日没後には、仕事帰りだろうか、作業着を着たまま投票に訪れた男性たちの姿が。投票を終えるとまっすぐ帰るのではなく、1枚の紙を回している。

彼らが持っていた紙は、名前や住所が書かれた名簿。“絆の会”と書かれている。

──“絆の会”というのは何?

「分からないです」

──人数を集約している?

「自分もよく分からないけど、名前を書いてます」

その中の1人は、地元でアメリカ軍基地の建設工事に携わっているという。

──名簿を書いていたが、あれはどういうもの?

「あれは、同じ派の“人数集め”というか…」

──会社で票の取りまとめをする?

「この期日前(投票)が終わった時に、開票前に(会社に)全部出して、最初に票をあらかじめ計算する」

この名簿は、建設会社に勤める人たちが与党系の渡具知氏に投票したことを確認・報告するためのものだった。選挙戦中、応援に入った自民党議員の1人は「党本部の指示で地元の業界団体に票集めを徹底させている」と話す。

◆公共事業に依存する地元経済の実態も

国による大規模な公共事業が進む名護市。こうした事業に地元経済が依存している実態もある。

渡具知氏も選挙戦でこの点を徹底的に訴えた。

渡具知武豊氏(先月22日)「政府としっかり協議をし、ありとあらゆる予算を獲得するために自ら汗をかき、そして、名護市民のために使っていくんです」

一方で、名護市の辺野古沖で建設が進むアメリカ軍の基地問題には一言も触れない。そして先月31日、自民党が投入したこの人も─

自民党・小泉進次郎議員「子供たちの未来のために何をやるかという政策論争が、一番大事なんじゃないですか」

この日、3か所で行った演説で、基地問題に触れることはほとんどなかった。

◆基地建設反対の現職・稲嶺氏は

一方、辺野古への基地移設に反対する稲嶺氏。

稲嶺進氏「相手の予定候補(渡具知氏)は辺野古の“へ”の字も出てきません。変な話です」

稲嶺氏の選挙ビラを見せてもらうと、基地移設反対を見開きで訴えていた。市内でそのビラを一軒一軒配り歩いている人たちを見つけた。

京都から応援に来た共産党員「僕は共産党です。全都道府県から応援をする。負けられへんさかい、ほんまに」

今回、共産党など野党側が稲嶺氏を全面的に支援。しかし、政府・与党を挙げての攻勢には及ばなかった。

翁長沖縄県知事(5日午後)「(移設反対の)県民の民意というのは、生きているということは当然」

◆秋には県知事選挙が…移設は?

秋に行われる県知事選挙に向けて勢いづく政府・与党。

安倍首相「基地問題については、市民のみなさまのご理解を頂きながら、最高裁の判決に従って進めていきたい」

有権者の理解は得られたとして、名護市へのアメリカ軍基地の移設を着実に進める構えだ。