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敵作り攻撃、身内も…不安定なトランプ政権

2018年1月18日 20:25

【トランプ大統領就任1年】
アメリカのトランプ政権発足からまもなく1年、メディアと対決し続けてきたトランプ大統領が、偽ニュースだとする「フェイクニュース大賞」なるものを発表した。敵を作って攻撃する手法は変わらないが、そのことで、政権運営自体が不安定になっている様子が見えてきた。

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■大統領が「フェイクニュース大賞」発表

日も暮れた夜のホワイトハウス。会見室で待っていた記者たちが、突然ざわめいた。トランプ大統領がツイッターで、最も間違いが多く、偏った報道を選ぶ「フェイクニュース大賞」を発表した。

記者「サイトがダウンしてるぞ」

午前10時過ぎ、その時、日本でも結果をクリックするとつながりにくい状況になっていた。

「大賞」のレッテルを張られたのは、11のニュース。

たとえば「ニューヨークタイムズ」は「大統領選でトランプ氏が勝てば『経済は回復しない』と主張した」として選ばれた。

中でも最多の4つのニュースが選ばれたのがCNNテレビ。その一つが、トランプ大統領訪日の際、コイに餌をやるシーン。「大統領が魚の餌をやりすぎているように映像を編集した。これは安倍首相がやり方を教えてくれたものだ」としている。

さらに、CNNが「ロシア疑惑」について報じたニュースをやり玉にあげた上で、「ロシア疑惑」自体が「フェイクニュース」だと主張した。

トランプ大統領「2017年は不公平なニュース、正真正銘の偽ニュースの年だった」

自らに批判的なメディアを攻撃し、圧力をかけ続けるトランプ大統領。「フェイクニュース大賞」の発表に、当のアメリカメディアは…。発表から2時間過ぎても、ニュース専門チャンネルはこのニュースをほとんど扱っていなかった。抗議の意味があるのだろうか?

■1年で側近4人が辞任

しかしこの1年、トランプ大統領が攻撃してきたのはメディアだけではない。「身内」である側近たちにも――

トランプ大統領(去年7月)「セッションズ司法長官には非常に失望している」

トランプ大統領(今月4日)「バノンとはもう話さない」

政権発足当初の「幹部」たちは1年で4人が辞任した。

ペンス副大統領
ティラーソン国務長官
マティス国防長官
バノン首席戦略官→辞任
プリーバス補佐官→辞任
フリン補佐官→辞任
クシュナー上級顧問
スパイサー報道官→辞任

先月辞任した後も側近と目されていた“影の大統領”バノン前首席戦略官も、政権の暴露本「炎と怒り」での発言がトランプ大統領の怒りを買い、今月、完全に決別した。

■トランプ氏が側近に求めるものは「服従」か

トランプ大統領に「側近」として仕え続けるには何が求められているのだろうか。アメリカメディアの多くはこう報じている。

ニューヨークタイムズ「『自らの前にひざまずき、服従する』これがトランプ大統領が周りに求めること」

確かに去年6月、こんなシーンが。

ペンス副大統領「副大統領として大統領に奉仕するのは、人生最高の特権です」

ロス商務長官「貿易赤字などを解消する機会をいただき感謝いたします」

居並ぶ閣僚たちがこぞってトランプ大統領を持ち上げる異様な光景だった。ところが、この側近たちの「絶対服従」の姿勢が、政権の「障害」になっていると指摘した、トランプ大統領の友人がいる。

ワシントンポストより「トランプ大統領の周りにあまりに多くの『イエスマン』がいることが混乱の原因だ」

2016年に大統領選でも支援した不動産投資家のトーマス・バラック氏だ。

バラック氏「トランプ氏は反論はするが、『自分が間違っている』と言われること自体は実は嫌いではない。周りにそれを言う勇気がないだけだ」

■イエスマンの顔ぶれに変化も…最側近は“北朝鮮強硬派”

「イエスマン集団」との批判もあがるホワイトハウス。では今、トランプ大統領に最も近いのは誰なのだろうか?

CIA(=中央情報局)のポンペオ長官。トランプ大統領は、毎朝一番にポンペオ長官に会い、ブリーフィングを受けているという。北朝鮮への対応では――

ポンペオCIA長官「(北朝鮮への)軍事行動はないという人もいるが、私は冗談で『4つの軍事的選択肢を見たぞ』と言った」

「早期の軍事攻撃」を主張している「強硬派」。一部では、現在のティラーソン氏に代わって新たに国務長官に就任するとの観測もある。ただ、政権幹部が次々と入れ替わる状況は政策を実行することの障害になっているとの指摘も。ホワイトハウスを取材している記者は――

ワシントンポスト アシュリー・パーカー記者「政権の初期から、幹部同士がお互いの足を引っ張っていました。これもホワイトハウスの迷走の原因です」

さらに、政権幹部としてトランプ大統領に寄り添う娘婿のクシュナー顧問にもロシア疑惑の捜査が及ぶ可能性がくすぶり続けていて、トランプ政権は、足元が不安定なまま2年目に突入することになる。