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韓国に恩を売って利用?管弦楽団派遣の狙い

2018年1月16日 19:28

北朝鮮の金正恩委員長自らがプロデュースし結成された「牡丹峰(モランボン)楽団」。来月に開幕する平昌オリンピックへの派遣が取りざたされていたが、韓国と北朝鮮は15日、牡丹峰楽団ではなく「三池淵(サムジヨン)管弦楽団」が韓国で公演することで合意した。三池淵管弦楽団とは一体どのような楽団なのだろうか。そして、北朝鮮の狙いとは―。「news every.」小西美穂キャスターが解説する。

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北朝鮮はすでに選手団、応援団、楽団を派遣すると表明しているが、中身は決まっていなかった。今回初めて楽団が決まり、平昌オリンピックの会場の江陵とソウルでも公演を行うことで合意した。

北朝鮮の説明によると、メンバーは140人で曲は「統一の雰囲気に合うような南北がよく知る民謡、世界の名曲などで構成する」と説明したという。

三池淵管弦楽団というものは専門家でも聞いたことがないということだが「三池淵楽団」なら映像があり、おそろいのドレスを着た女性と、男性の姿もある。専門家によると、結成されたのは2009年頃でメンバーは音楽大学出身のエリート。海外向けにCDやDVDも出しているそうだ。

ただ、ポイントは金委員長の肝いりの牡丹峰楽団ではなかったということ。北朝鮮情勢に詳しい武貞秀士氏によると、牡丹峰楽団は北朝鮮国内でも非常にレベルが高くて、演奏しながら踊れることや容姿が端麗であることを考慮して金委員長自らメンバーを選抜しているという。曲目や演奏順まで金委員長が決めているそうだ。

15日、韓国との協議に牡丹峰楽団の団長である玄松月氏が出席していたので派遣されるのではないかとささやかれていたが、慶応大学の礒崎敦仁准教授によると、「牡丹峰楽団の歌は最高指導者を称賛したり北朝鮮体制の宣伝をしたりするものが多いため、韓国か北朝鮮どちらかの意向で避けられた」という。

牡丹峰楽団の公演はモニターにミサイルの映像が流されるなど、政治的な宣伝色が強い。3年前には中国での公演が直前で中止となった。中国が政治色を嫌って、北朝鮮との間で折り合いがつかなかったからと言われている。

一方で別の可能性として磯崎准教授は「牡丹峰楽団は最高峰、ここぞという時に出そうと考えた可能性もある」と分析している。

韓国の文在寅政権としては南北交流の実績がほしいので政治色が強いといえども、ぜひとも牡丹峰楽団に来てもらいたかった。しかし、北朝鮮はそんなに簡単に派遣しないぞと、例えば今後、韓国が米韓軍事演習をオリンピックの後もやらないといった条件をのんだら出すなど、カードとして残しておきたいという考えがあったのではないかという。

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北朝鮮としては、この機会に国のイメージアップを図ろうとしている。一方の韓国はオリンピックを成功させたい一心から、その韓国に恩を売るだけ売って、あとは韓国を利用してアメリカを封じ込めたいという狙いも透けて見える。北朝鮮の出方を注意深く見る必要があると言えるだろう。