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震災で息子亡くした母に「二十歳の似顔絵」

2018年1月13日 17:00
震災で息子亡くした母に「二十歳の似顔絵」

東日本大震災の当時、中学1年生の息子を亡くした宮城県名取市の女性に、成人した姿の息子を描いた似顔絵が贈られた。きっかけは3年前の約束。今は亡き息子を思い続ける母の姿を追った。

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名取市閖上で震災の語り部をしている丹野祐子さんは成人式の8日、ある男性を待っていた。それは、3年前の約束を果たすため――

丹野さん「いまは、すごい期待と不安。どうかなって思いますね」

沖縄県在住のイラストレーター森琢磨さんは、被災地で似顔絵を描くボランティアを続けている。森さんは震災の年の9月から仮設住宅などを訪れ、被災した人に似顔絵をプレゼントしている。森さんが描く似顔絵は皆笑顔。受け取った人も自然と笑顔になる。これまで9000人近くの人に絵を贈った。

語り部を続ける丹野さんも似顔絵を依頼した1人。2014年9月、森さんから渡されたのは家族4人が収まった絵。そこには震災の津波で亡くした息子・公太君が描かれていた。

丹野さん「そっくりです。(写真を)飾ると本当に息子が亡くなった現実を見るのが怖くて、遺影さえもこんな小さいのを置いている」

震災当時、中学1年生だった公太君(当時13)。今年、大人の仲間入りをするはずだった。家族の似顔絵をもらったとき、丹野さんはお願いをした。3年後、成人した姿の公太君を描いてくださいと――

今月7日、森さんは約束の成人した姿の公太君を描いていた。

森さん「写真を見る限りでは優しそうな感じの子なので、大きくなっても優しい感じをイメージして描いたつもり」

森さんは公太君に会ったことはない。語り部の丹野さんの話などを聞き、20歳になる公太君をイメージして描いていった。

そして、いよいよ迎えた約束の日。

丹野さん「なんか怖い。知らない7年間がここにある。(受け取った似顔絵を見て)えー…どうだろうね…(涙)ありがとうございます」

森さん「想像なのでこんな感じかなって」

スーツに身を包んだ20歳の公太君。いまは想像しかできない。

丹野さん「本物以上にかわいく描いてもらって。良いところのぼっちゃんみたい。本当は現実を知るのが怖いところもあるので、見たいような見たくないようなところだった。自分の中では13歳の姿のまま、『ただいま』って帰ってくるかなって、どっかでまだそんなことも考えてる」

絵の中で果たした大人の仲間入り。母はきょうも息子の姿を想像する。