“エジプトの宝”移送成功に日本の技術力
ツタンカーメンの「黄金のマスク」で知られるエジプトの博物館で、展示物の移送作業が行われた。その一部始終に密着。そこには、日本の技術があった。
■エジプトで活躍する日本の技術
エジプトの首都・カイロの考古学博物館。最大の目玉は「黄金のマスク」など、数千点のツタンカーメン・コレクション。ツタンカーメンは、古代エジプト第18王朝(紀元前14世紀)の王で、若くして死亡したとされている。1922年に見つかったミイラは世界中で話題となった。
そのツタンカーメン・コレクションのひとつ“儀式で使われた木製の戦車”が先月中旬、運び出されようとしていた。そこで見たのは――
可児記者「輸送する戦車の解体作業が行われているんですが、輸送中に壊れないように、日本の和紙で保護しています」
3000年以上前に作られた物のため、“繊細さ”が不可欠な作業。その作業を支えていたのは、日本の技術だった。
■「少しくらい壊れても…」からの意識改革
実は、JICA(国際協力機構)が、日本の専門家をエジプトに派遣して、技術指導を行っている。そのうちの1人、徳田英昌さん(日本通運 関東美術品支店)は、8年前から、エジプト人スタッフに梱包(こんぽう)・移送の技術を教えている。しかし、当初は、エジプト人の考え方に戸惑いもあったと明かす。
徳田さん「(彼らは)数パーセントなら許容範囲だ、壊れてもいいと(言っていた)」
「少しくらい壊れてもいい」――徳田さんの指導は、こうした意識を変えるところから、始まった。
徳田さん「(壊れるのは)ゼロと言いました、絶対ダメだと。それがないと大事に扱えないじゃないですか」「作品の下には敷物を敷きましょう。研修はそういうところから始めました」
言葉の壁を感じつつも、「思いは同じはず」と信じて、指導を続けてきた。今では、徳田さんの考えも浸透。スタッフたちの技術が向上したという。
■いよいよ新博物館へ移送
エジプト人スタッフ「日本式の訓練はエジプト人の能力向上にとても良い方法だ」
時には作業を見守り、また、時には、自ら実践してみせながら、4日間かけて、戦車を運び出した。梱包された部品はトラック3台に積み込まれ、考古学博物館を出発した。ツタンカーメン・コレクションはエジプトの宝。パトカーによる護衛付きだ。
向かった先は、カイロ郊外に建設中の「大エジプト博物館」。今後、ここで展示されることになる。徳田さんらは、その一角で、移送後の状態を確認。梱包された部品を1つ1つ慎重に取り出し、破損がないか、くまなくチェックする。もっとも緊張する瞬間――結果、問題は見つからず、移送は無事成功した。
徳田さん「作業が無事に終わって、まずホッとしています」
ツタンカーメンと日本の技術、エジプトとの交流が深まっている。