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カストロ議長退任でキューバは新時代へ

2018年1月3日 16:07

カリブ海の島国で共産党が一党支配するキューバでは、ラウル・カストロ国家評議会議長(86)が今年で退任する意向を表明している。1959年のキューバ革命で、兄のフィデル・カストロ元議長が政権を取って以降、59年続いたカストロ兄弟の指導体制が終わる。

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キューバ共産党の機関紙「グランマ」によると、キューバの国会にあたる人民権力全国議会は、今年2月24日に満了する議員の任期を、4月19日に延長することを決めた。これによりカストロ氏の任期も2か月延長される。任期を延長する理由については、去年9月のハリケーン「イルマ」で、沿岸部を中心に住宅18万棟やインフラ設備に被害が出て、選挙の準備が遅れたためとしている。

その一方で、ロイター通信によると、専門家の中には、次の指導者への移行を確実に行うためとの見方がある。カストロ氏の後任は正式には発表されていないが、政権ナンバー2のミゲル・ディアスカネル国家評議会第1副議長の昇格が有力視されている。ディアスカネル氏は、カストロ氏より29歳若い57歳。キューバ革命後に生まれた世代だ。

新体制が直面する当面の課題は、国内経済の立て直しだ。カストロ氏は2008年の就任以降、経済の自由化を一部取り入れ、外国からの投資を誘致したり、自営業の規制を緩和したりした。その結果、「グランマ」によると、去年1月から11月の外国からの旅行者数は425万人で、前年同期と比べ20%増えた。去年1年間では470万人と予想され、キューバ政府は今年は500万人に達すると見込んでいる。ただ、観光客の増加で経済効果が現れた反面、観光関連で外貨を稼ぐ自営業者と国営企業の従業員との間に収入の格差が広がり、今後、国民の間に不満が高まる恐れがある。

政治面では、反体制派に対する人権侵害が問題視され続けた。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」のまとめによると、2016年1月から8月にかけて、恣意(しい)的な身柄の拘束が7900件以上報告され、人権団体が中止を求めてきた。またアメリカのトランプ大統領は、キューバ国内で政治的な弾圧が行われているとして、キューバへの渡航制限の復活や金融取引の規制など制裁強化を打ち出した。オバマ前大統領時代にアメリカとの国交を54年ぶりに回復したが、トランプ政権後、両国の関係は再び冷え込んだ。アメリカの制裁強化に対し、キューバ側は「アメリカには人種差別や児童労働、銃犯罪があり、我々はアメリカ国内の人権問題を懸念している。アメリカは我々に説教をする立場にはない」と反発を強めている。

キューバ革命の英雄で「反米左派のカリスマ」として強い指導力を発揮したフィデル氏が2016年、死亡し、後を引き継いだ弟のラウル氏も議長を退くことで、キューバは新たな時代を迎える。今年4月にも発足する新体制は、カストロ兄弟が残した光と影の何を引き継ぎ、何を変えるのか。次の指導者の手腕が問われる。