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SNS事業者の「命を守る」自殺防止対策

2018年1月3日 2:47
SNS事業者の「命を守る」自殺防止対策

神奈川県座間市にあるアパートの一室で9人の切断遺体が見つかった事件。事件のきっかけになったのは、友人や知らない人と気軽にコミュニケーションがとれるSNS(=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のツイッターだった。

この事件を受け、日本でツイッターを運営するツイッタージャパンは利用規約を改訂し、自殺や自傷行為を促したりあおったりすることを禁止すると明記した。これまでも自殺などの兆候がある利用者に対して、カウンセラーの連絡先を伝えるなどの対応を行っていたが、今後は専門団体とも相談しながら、より安全性を強化する考えだ。

また、自殺願望がある利用者にみられる兆候として「死にたい」「絶望した」「過去に自殺を試みた」といった投稿内容や雰囲気や内容が急激に変化することなどを挙げ、まわりの利用者がその兆候に気づいた場合にはツイッター側に報告するように呼びかけている。自社のシステムで対応するには限界があることから、世界に3億人以上いる利用者のネットワークを活用していく考えだ。

一方、フェイスブックはAI(=人工知能)を利用した自殺防止の取り組みを拡大した。アメリカで既に導入されてきた自殺防止システムについて、ヨーロッパ以外の世界各国でも導入を始める。このシステムでは自殺願望の表れと思われる投稿や動画をAIが検出する。さらに、自殺願望のあると思われる利用者の投稿内容だけでなく、「大丈夫ですか」「何かお役に立てますか」というまわりの利用者のコメントからも、その自殺願望を検出するという。

このようにIT業界で強化されてきた自殺防止への取り組みだが、事件や問題を受けて対策が後手後手にまわっている印象はぬぐえない。

こうした中、LINEやフェイスブックといったインターネット事業者17社からなる「青少年ネット利用環境整備協議会」は自殺の兆候がみられる利用者を事前に察知し、カウンセラーの連絡先を紹介するシステムなどを迅速に導入するよう業界全体に呼びかけている。

しかし、インターネット上でシステム対策を行うだけでは十分な対策とはいえない。SNS上の声を拾って利用者にカウンセラーの連絡先を提示するような、受動的な仕組み作りだけでなく、たとえばITリテラシーが十分でない子どもたちに対しては家庭や教育機関、地域が連携して「SNS上で出会った人には会わない」というルールを意識づける場を設けるなどの取り組みを進める必要がある。

システムに頼るだけでなく多方面からの見守りを強化することで凄惨(せいさん)な事件が二度と起こらぬことを願いたい。