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身近な増税相次ぐ…暮らしに影響は?

2018年1月2日 16:00
身近な増税相次ぐ…暮らしに影響は?

政府は2017年12月、自民党と公明党がまとめた2018年度の「税制改正大綱」を閣議決定した。今回の目玉は、所得税の見直しだ。2020年1月から所得税のしくみが大きく変わる。

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今回の改革で増税になる人は、年収850万円を超える会社員や公務員、年金収入だけで1000万円を超える高齢者、また、年金以外の所得が1000万円を超える高齢者だ。

一方で、減税になるのは自営業やフリーランスの立場で働いていて、所得が2400万円未満の人。

このように、働き方の変化に対応するため、所得税の控除のあり方を見直した。具体的には、会社員などは、給与に対する税の負担を軽くする給与所得控除を一律10万円減らす一方、すべての人が対象の基礎控除を10万円引き上げるため、フリーランスなどで働く人は減税となる。

一方、高所得の会社員は増税となる。給与所得控除の上限をこれまでより下げて、年収850万円を超えると控除額が195万円で頭打ちになる。増税される額は、年収900万円で年に1.5万円、1000万円で4.5万円、1500万円では6.5万円程度になる見通しだ。

ただし、22歳以下の子どもや介護が必要な人がいる場合は対象外で、負担が増えるのは会社員や公務員の4%になる。

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こうした働き方の多様化に合わせた見直しは大切だが、「取りやすい会社員を狙い撃ちにした」との批判もある。実際、会社員に比べて自営業者の所得の正確な把握は難しい。

また、年収が1億円を超えるような超富裕層の収入源となっている株で得た利益などは増税になっていない現実もある。株式を売買して得た利益や配当にかかる所得税は諸外国に比べて低く、政府は今後の検討課題としているが、株価をエンジンとする「アベノミクス」を後退させるような増税に果たして官邸が賛同するのか、道のりは険しい。

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新たな税も創設された。住民税に1000円を上乗せする「森林環境税」、出国時に1000円を徴収する「国際観光旅客税」の2つ。

たばこ税も増税になる。紙巻きたばこは2018年10月から4年間かけて1本あたり3円、加熱式たばこも初めて増税となり、2022年度まで5年かけて段階的に引き上げられる。

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こうした身近な暮らしへの増税が相次ぐなか、企業向けでは、3%以上の賃上げをした企業や、設備投資に積極的な企業に対して法人税を減税する優遇措置を拡充する。こうしたことから、「なぜ企業ばかりが優遇されるのか」といった声も上がっている。

実際、2018年度に見込まれている2800億円の増収のほとんどが個人向けの増税だ。税制大綱には2019年度改正以降も所得税改革を続ける方針が明記されていて、引き続き所得が高い会社員が増税対象となる可能性がある。介護保険料や健康保険料なども上がっているなか、個人の負担が重くなるかたちだ。

政府は企業への減税で浮いた資金が賃上げにまわり、消費が拡大する「経済の好循環」を狙うが、2019年10月には消費税の増税も予定されていることから、家計への相次ぐ負担増が消費を冷え込ませることも考えられる。

高齢化で増え続ける社会保障費など、根本的な歳出の抑制に踏み込まない限り、賃上げしたとしても効果は限定的だ。納得感のある税のあり方と使い道を探る必要がある。