×

「抜本改革」遠く…予算に見るこの国の未来

2018年1月2日 12:55
「抜本改革」遠く…予算に見るこの国の未来

「財政健全化は着実に進んできている」―2018年度の予算案が閣議決定された直後、麻生財務相は自信たっぷりに語った。2018年度予算案は「人づくり革命」と「生産性革命」の実現に向けた施策などを盛り込み、一般会計の総額で97兆7128億円と6年連続で過去最大を更新している。巨額の予算があらわすもの、それはこの国の未来だ。

    ◇

看板政策の「人づくり革命」では保育の受け皿を増やす予算を計上し、「生産性革命」ではインフラ整備や設備投資の促進などを盛り込んだ。看板政策の名のもとに多くの支出が盛り込まれた。

■歳出:社会保障費や防衛費が過去最大を更新

一方、歳出の3分の1はほとんどが高齢者向けの社会保障費だ。高齢化で年金や医療費などが膨らみ、32兆9732億円と2017年度を4997億円上回り、過去最大を更新した。焦点となっていた診療報酬については、膨張する薬剤費を抑えるための制度改革を推し進め、「薬価」を引き下げたが、医師などの報酬にあたる「本体」部分は0.55%引き上げた。介護報酬と障害福祉報酬もともに引き上げたことから、国費だけで800億円程度が必要になり、国民が支払う保険料や窓口負担も増えることになる。

防衛費も過去最大の5兆1911億円となった。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出などを背景に6年連続で増え続け、陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の設計費用なども盛り込まれ、4年連続で過去最大を更新した。

■新たに発行される国の借金、国債は9年ぶりの低水準も…

一方、歳入では戦後2番目の景気回復期が続いていることから、税収は2017年度より1兆3670億円増えて59兆790億円と27年ぶりの高水準を見込んでいる。この結果、新たに発行される国の借金、国債はおよそ33兆6922億円と9年ぶりの低い水準だが、それでも歳入全体の34・5%を国債という借金でまかなう綱渡りの状況が続いている。

■“先進国で最悪”財政への危機感は感じられず

第二次安倍政権の発足から5年。今回の予算編成でも、先進国で最悪とも言われる財政への危機感は感じられず、痛みをともなう改革は先送りされたままだ。2018年度は診療報酬と介護報酬の6年に一度の同時改定の年だ。増え続ける社会保障費にメスを入れ、借金頼みの財政をどう立て直すのか、その方策を考える絶好の機会だった。しかし、診療報酬で、医師などの報酬にあたる「本体」部分は引き上げとなり、「薬価」の引き下げで帳尻を合わせる形となった。日本医師会など、支持団体の顔色を見ながら「官邸主導」で予算案が決まってしまったと言わざるを得ない。

■財政再建への道は険しくなる一方

安倍首相は2017年10月の衆院選前に消費税の使途変更を打ち出した際、2020年度にプライマリーバランス(=基礎的財政収支)を黒字にするという目標も先送りした。政府は2018年夏には新しい目標を設定する予定だが、予算のタガが緩んでいる現状では、財政再建への道は険しくなる一方だ。

さらに、団塊の世代が75歳以上になる2025年度には、介護や医療にかかる費用は膨れあがる。若い世代にツケを回す目先の帳尻合わせに終始せず、高齢者の負担増など、抜本的な改革に取り組まない限り、安倍政権がめざす経済成長と財政健全化の両立はますます遠のくばかりだ。