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“生産調整”廃止でコメ生産はどうなる?

2018年1月1日 20:40
“生産調整”廃止でコメ生産はどうなる?

2018年、国によるコメの生産調整、いわゆる「減反」が廃止される。生産者は、国の意向に左右されずコメの生産量を自由に決めることができるようになる。今後、生産者同士の競争が活発になり品質の良いコメが手軽に入るようになるのか、高騰している業務用米の価格が安定するのか。日本のコメ政策は大きな転換点を迎えた。

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「減反」は日本のコメの消費量が減る中、コメが余らないよう生産者が作れるコメの量を毎年、政府が決めるものだ。この「減反」について、政府は2018年に廃止するほか、主食用米を作る生産者への補助金、10アールあたり7500円も取りやめる。

なぜ「減反」が廃止されるのか。主食用米の需要が年間約8万トンずつ減り続ける中、コメ作りが成長産業化するよう生産体制を見直す必要があったからだ。

「減反」の廃止により、生産者は市場を見据え、品種や生産量など臨機応変なコメの生産を行えるようになるため、大規模化や効率化が進むことが期待されている。生産者同士の競争も活発になるとみられ、すでに2018年から販売予定の富山県産新品種「富富富」など「減反」後をにらんだ高価格帯ブランド米の開発も進んでいる。

こうした工夫により、消費者はおいしいコメがこれまでより安く買えるようになる可能性がある。品薄が続く業務用のコメについても、生産者に課せられていた生産量の上限がなくなることで大量生産できるようになり、外食産業との安定契約につながることも考えられる。

青森や栃木などは業務用米を中心に作る戦略をたてている。また、「減反」の廃止に伴い補助金の打ち切りが行われるが、生産性の低かった零細農家が経営を見直すきっかけにつながるとみられる。

一方、デメリットもある。生産者が売り上げアップを目指してコメの生産量を急に増やしたり、ブランド米ばかりが生産されたりすると、需要と供給の関係が崩れ、市場の混乱や生産者の経営悪化につながる恐れがある。

こうしたデメリットに生産者から不安の声があがったことから、最大の農業団体であるJA全中(=全国農業協同組合中央会)などは2017年12月、対応に乗り出した。国に代わって、生産調整の目安となるデータを生産者に提供する新しい組織を立ち上げたのだ。ただ、どのような形でデータを提供していくかや、どのような団体が加盟するかなど、具体的な内容は詰まっておらず、今後、機能するかは不透明だ。

コメの消費量が減り続ける中、「減反」の廃止で生産者がどこまで魅力的なコメを生産し、市場の拡大につなげることができるのか。新たな取り組みが始まる。