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3万人削減…メガバンクに漂う強い危機感

2018年1月1日 13:40
3万人削減…メガバンクに漂う強い危機感

「安定」のイメージが根強いメガバンクは就職したい企業ランキングの上位に名を連ねる人気企業だ。しかし、そんなメガバンクにいま、強い危機感が漂っている。

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2017年11月、みずほフィナンシャルグループは26年度末までに1万9000人の従業員を減らすと発表した。また、三菱UFJフィナンシャル・グループは9500人分、三井住友フィナンシャルグループは4000人分の業務量を将来的に削減するという。削減量は3行あわせて3万2500人分だ。多くの企業が好業績を上げるなど、日本の景気が回復の兆しを見せているなかで、メガバンクが相次いで打ち出した、大規模な人員削減計画。背景にはいったい何があるのだろうか。

■銀行は構造不況業種なのか?

「マイナス金利の影響に加えて少子高齢化といった社会的な構造変化がボディブローのように効いてきている」-三菱UFJの平野信行社長は12月14日、全国銀行業界会長会見で、銀行業界が置かれている現状についてこう語った。日銀のマイナス金利政策が、銀行の収益を圧迫していることに加え、人口減少で日本市場での大きな成長も見込めないという。

記者から「銀行は構造不況業種なのか?」と問われると「今後、経済が本格的に回復し、デフレ脱却が実現すれば、銀行の業績も好転するはず。ただ、我が国における状況はそう簡単ではないと覚悟しなければならない。伝統的な商業銀行モデルでは成り立たなくなる」と危機感を隠さなかった。

平野社長の言葉には、日本が銀行にとって「稼げない国」になりつつあることへの焦りがにじむ。

■急速に進むデジタル化

もう一つ、メガバンクが共有する危機感は圧倒的なスピードで進むデジタル化の流れだ。お金の振り込みや株の購入などの資産運用もインターネット上で簡単にできるようになり、銀行の店舗を訪れる人は年々減っているという。このため、みずほは2024年度末までに約500店舗から約400店舗まで減らす計画で、三菱UFJも2023年度までに現在国内に516店舗あるうちの70~100店舗を「機械化店舗(仮称)」に転換する方針を明らかにしている。

機械化店舗には、少人数の従業員しか配置せず、これまで従業員が対応していた手続きや相談業務は高機能ATMやテレビ電話を通して行えるようにするという。

また、三菱UFJが地銀32行と提携して10月に設立した新会社「ジャパン・デジタル・デザイン(JDD)」では、ATM(=現金自動預け払い機」を車に載せた移動式銀行「ATMカー」の開発が進む。将来的には、スマホのアプリでATMカーを自宅前に呼べるサービスも想定しているという。

開発の音頭を取るJDDの上原高志CEOは「デジタル技術を取り入れて、よりよい体験をお客さまに提供しないと、銀行業界は立ちゆかなくなる」と銀行におけるデジタル技術の重要性を述べ、「デジタル化が進めばもう店舗がいらなくなる、ということも考えられる。銀行は行く時代から来る時代になるのではないか」と銀行の未来を語った。

■生き残りをかけた構造改革

マイナス金利や人口減少、デジタル化など、めまぐるしいスピードでビジネスを取り巻く環境が変わるなか、生き残りをかけて抜本的な構造改革の必要に迫られたメガバンク。しかし、メガバンクが持つ危機感は日本経済全体が抱えている課題でもある。変化を恐れずチャレンジするか、取り残されるか―。日本企業はいま、大きな岐路に立っている。