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「景気拡大」でも静かな日銀 出口の議論は

2018年1月1日 11:45
「景気拡大」でも静かな日銀 出口の議論は

「景気拡大」でも静かな日銀、2018年は出口の議論できるか。

■静かな1年
日銀は2017年、金融政策を1年を通して一度も変更しなかった。これは黒田総裁が2013年に就任して以来、初めてのことだ。

追加の緩和策が必要なかったということは、それだけ足元の日本経済が良好な証しでもある。実際、12月に発表されたGDP(=国内総生産)は7期連続のプラス成長となり、大企業の製造業における景気認識も5期連続で改善した。

しかし同時に、金融政策の変更がなかったということは、景気が緩やかに拡大している状況下であっても、日本が大規模な金融緩和策から抜け出せなかったということも意味する。

2017年最後の金融政策決定会合が開かれた12月21日、黒田総裁は記者会見で、現在の日本の景気は「デフレの状況ではなくなった」と自信をのぞかせつつも「景気がよいからそろそろ金利を上げるかとか、そうした考えはない」と当面の金利引き上げを否定。2%の物価安定目標を達成するまで、粘り強く金融緩和を続けていくという従来の考えを改めて示した。

■海外は脱却の動き
日本が大規模な金融緩和策を継続する一方、アメリカやヨーロッパの中央銀行では、リーマンショック以降続けてきた金融緩和から脱却する動きが続いている。

先陣を切ったのはアメリカの中央銀行にあたるFRB(=連邦準備制度理事会)だった。2014年、FRBは国債などを買い取ることで市場に大量の資金を供給する量的緩和を終了。2015年にはゼロ金利の解除に踏み切り、その後、緩やかに利上げを続けている。

アメリカから少し遅れてECB(=ヨーロッパ中央銀行)も、2017年10月、量的緩和の縮小を決めた。緩和の“出口”の議論すら進まない日本とは対照的に、欧米では金融政策の“正常化”が進んでいる。

■緩和長期化に潜む副作用
たしかに金融危機後の日銀の金融緩和には、株高をもたらすなど一定の効果があっただろう。しかし、最近では、緩和長期化による副作用も懸念され始めている。

黒田総裁自身、2017年11月のスイスでの講演で、金利を下げすぎると銀行などの利ざやが縮小し、かえって金融緩和の効果が反転する可能性があるとする「リバーサル・レート」と呼ばれる理論を紹介し、マイナス金利の副作用に言及した。

また、景気のよいときに金融政策を正常化していなければ、次に大きな金融危機に見舞われたとき、緩和の余地がなくなるとの指摘もある。

■2018年、出口の議論はできるか
いずれにせよ、日本の景気が真に回復したと宣言するには、金融政策の正常化は欠かせない。

静かな1年だった2017年。ただ、2018年は同じようにはいかないだろう。景気が腰折れしないか細心の注意を払いつつ、出口の道筋を模索する、日銀にはこれまで以上に難しいかじ取りが迫られることになる。