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成功例ゼロ「食のネット販売」に挑んだ男2

2017年12月18日 19:24
成功例ゼロ「食のネット販売」に挑んだ男2

オイシックスドット大地・高島宏平社長に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「ピーチかぶ、栗じゃがいも、トロなす…ネットならではの野菜の売り方」。オイシックスの急成長を支えたネット時代のアイデアとは?


■“スター野菜”のネーミングは?

――オイシックスのサイトを見ますと、ピーチかぶ、栗じゃがいも、トロなすなど、ユニークな名前が並んでいますけれども、ネーミングはどのようにしてつけられたんでしょうか?

ネーミングはいろんな人がつけますね。その商品を開発してきた人がつける場合もあれば、Webサイトの制作者がつけるケースもあります。


――そのユニークな名前がついた野菜の写真が、画面にも出ていますけれども、栗じゃがいもの中身は、黄色で栗のようですね。

そうですね。味もそうなので、非常に甘いんですけれど。


――ピーチかぶっていうのは?

ピーチかぶは、もともとは「はくれい」という、絶滅しつつあるかぶなんですよね。僕らがそれを知ったのは、農家さんに行ったときに、農家さんが自分で食べるようにそっと端っこでちょこっと作っていたんですよね。

これは何ですかって聞いたら「はくれい」っていって、生サラダで食べて、めちゃくちゃおいしいと。だけど作るの大変だから、売る用はやってないと。一生懸命売っても、売れないからやってないというのがあって、僕らがそれを見つけて、すごくおいしかったんで、やっぱこれを売りたいということで、その農家さんにお願いして、すごく嫌がられたんですけど。

絶対売れないし、作るの大変だしって言ったんですけど、まあ、それを作っていただいて。でも、「はくれい」だと、その良さが伝わらない。ものすごい、ジュワッとこう、生で食べると果汁があふれるみたいな感じなんですよ。で、ほのかに甘い。

それを何て言おうかなっていうことで「ピーチかぶ」っていう名前にして、販売したところ、非常に売れてですね。もうそこの農家さんは、全部をピーチかぶにして、それでも間に合わずに、その地域の若い農家にピーチかぶの指導をして、ピーチかぶ一帯ができ上がっているみたいな感じですね。


■「難しいことを伝える」のもネットの力

――このネーミングひとつの付け方で、売り上げというのはかなり左右するものでしょうか?

ネーミングだけで10倍100倍と、売り上げは違ってきますね。やはりインターネットが、実店舗ではできない何ができるかというと、本当はおいしいけど、その良さが知られていない食べ物たちがいっぱいあって、一見では、伝えるのが難しいものを実はおいしいよってことを伝えるのが、やっぱりインターネットの力だと思うんですよね。

それはネーミングもそうですし、興味を持っていただければ、文字情報もいっぱい出せるので、店頭では出せないような情報をお出しすることができるということで、力のあるものは何とかネーミングを工夫しながらヒットさせていくということをしていますね。


――消費者の声を生産者に届けるっていうような意味もあるっていうことですかね。役割としては。

そうですね。先ほどのように、お客さんからの声がいっぱい来るので、それを生産者に届けるっていうのもありますし、それから生産者のその、この「はくれい」みたいに自分はおいしいって知ってるけど、それを伝える方法なんてないと諦めてしまっているものを僕らが翻訳家として、生産者に思いを伝えることによって、お互い今まで出会っていなかった、おいしいものを伝え合うことができるというふうに思います。


■結果、生産者と消費者がつながった

――そういった意味ではやっぱり、生産者と消費者の間で食の見方とか、常識とかっていうのは、やっぱり、まだまだギャップはありますか?

ありますね。やっぱりお客さんが一番おいしいと思うトマトと、生産者が一番おいしいと思うトマトがズレていたりするときがあって。そのお客さんの声を持っていくと、最初は、「オイシックスの客はトマトをわかってねぇ」とか最初は言うんですけど、しつこく持っていくと、「なんかオイシックスの客は変わってるから、じゃあ、ちょっと収穫のタイミングを変えようか」とか、そういうふうにして、どんどんお客様が求める味を生産者の方が作っていただけるようになるというふうになってますね。


――ある意味、懸け橋になっているということですか?

そうですね。やはり今まですごく遠かったんですよね。作る人と食べる人の間って、ものすごい商売としてはいろんな人たちがいて、結果としては、お互い直接会話を交わすきっかけがなかったので、僕らがまさに懸け橋の役割をして、直接会話をするような機会を作っているというようなところがあると思います。