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地震で延期に大慌て!韓国“お受験狂騒曲”

2017年11月23日 19:13

 人生を左右するとも言われ、毎年、受験生の応援などで過熱する韓国の大学入学試験。今年は、少し事情が違っているようだ。先週起きた地震のため、急きょ1週間延期して実施されたのだ。入試に臨む受験生たちの本音とは…?

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 23日朝、韓国・ソウルに、若者たちの叫び声が響いた。「頑張ってください!!」と試験会場に響く声に、受験生らが「後輩たちよ、ありがとう!」と応える。実は、日本のセンター試験に相当する大学入試が行われたのだ。

 後輩たちは会場で受験直前の先輩にエールを送り続け、受験生らが声援を受けながら会場へと入っていく。出身大学で人生が決まるとまで言われる学歴社会の韓国。後輩たちは、はた目には少し滑稽でも、本人たちは至って真剣だ。

 そして、「毎年恒例」の光景も。遅刻しそうな受験生をパトカーで送り届けるのだ。ボランティアのバイク部隊も出動し、こちらも遅刻しそうな受験生を会場へ送っていた。

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 入試に臨んだのは約59万3500人。政府は官公庁や企業に対し出勤時間を遅らせるよう要請。英語のリスニング試験の時間帯は航空機の離着陸を禁止するなど、国中が「受験一色」に染まっている。

 市内の寺では、合格祈願をする両親の姿も見られた。

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 実はこの試験、もともと先週16日に行われるはずだったのだが、前日、韓国南部でマグニチュード5.4の地震が発生。試験会場に亀裂が入るなどの被害が出て、この日に延期されたのだ。

 韓国政府「2018年度の入学試験を1週間延期する」

 災害を理由にした延期は初めてのこと。

 前日に参考書を捨てて大学入試に臨むことがここ数年のいわば「お約束」となっている韓国だが、思わぬ延期で受験生たちは大慌て。予備校では、捨てられた参考書の中から自分のものを捜して回る姿が見られた。

 さらに1週間、追加で勉強することになった受験生たちは─。

 受験生「1週間延期なんて信じられませんでした。足元から崩れ落ちるような気持ちになりました」

 地震のあった浦項(ポハン)では、余震などへの備えも。予備の試験会場12か所を整備し、受験生を移動させるためのバスが244台待機する力の入れようだ。

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 こうした中、高麗(こうらい)人参エキスの専門店では、勉強に励む受験生のためにある「おまけ」が。キャンペーン商品を購入すると、受験生に韓国の有名な山の麓でとれた空気が入っている缶がプレゼントされるのだ。

 店長「(受験生は)きれいな空気で集中力を高め、ストレス発散ができます」

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 一方で、あえて韓国の大学を受験しない若者もいるという。ソウル市内のビルを訪れてみると、『時事日本語学院』で日本語の授業が行われていた。生徒のノートには、「扇」「敬遠」など日本語の文字が書かれている。

 彼らは日本の大学への入学を目指し、日々ここで勉強している。生徒の数は約100人と、開校以来最も多いという。なぜ、韓国ではなく日本を目指すのか。

 高校2年生「(日本の大学は)韓国に比べて就職率が高い」

 実は、韓国の大学卒業生の就職率はここ数年、60%台で推移している(※韓国教育開発院調べ)。一方、去年、日本の大学の卒業生の就職率は97.6%(※文科省調べ)。苦労して入学しても就職が難しい韓国を離れ、日本など海外に目を向ける動きも出てきているのだ。

 国内の競争を勝ち抜くのか、国外に活路を見いだすのか。韓国の受験生たちは、厳しい環境に立ち向かっている。