×

先進国内でも深刻…日本の“自殺ケア”の今

2017年11月20日 15:55
先進国内でも深刻…日本の“自殺ケア”の今

 神奈川県座間市でSNSに「死にたい」と書き込んだ若者ら9人の遺体がみつかる事件があった。日本は世界的にみても自殺率が高いが、中でも、若い世代は深刻だ。先進国で、若い世代の自殺と事故の死亡率を比較すると、自殺が上回っているのは日本だけだ。追い詰められた若い世代へのケアの現状はどうなっているのか。


■いのちの電話、つながるのは25回に1回

 「はい、埼玉いのちの電話です」――いのちの電話とは、人間関係や生活苦など様々な悩みをもつ人や自殺を考えている人の相談電話。ボランティアの相談員が24時間電話を受け付けている。

 実は、よせられる電話の中で自殺傾向のある相談は年々増加していて、約20年前の5倍近くに増えている。助けを求める人が増える中、深刻なのが、ボランティア相談員の不足だという。ボランティアの高齢化や共働きの家庭が増えたことで、専業主婦などの参加も年々減ってきているという。実はいま、電話を25回かけて、1回しかつながらないほど人手が足りない状況になっている。


■若い世代が利用しやすい「メール相談」

 また、40代を中心に中高年の電話が多い一方で、若い世代を意識したメールで相談を受け付ける取り組みも行われている。“電話離れ”が顕著な若い世代は、メールのほうが相談しやすく利用者の7割が10~30代だという。相談の内容には「生きることに疲れた」「死にたい気持ちがとまらない」などと深刻なものもある。1通のメールを返すのに、複数人で相談しながら2時間ほどかかるという。平均年齢が60歳の相談員、若い世代の悩みについては―

 ボランティア相談員(50代)「つまらないから生きていたくないとか、つらいからではない悩みに答えるのは、すごく難しい」

 事務局長「(いのちの電話の)目的は治療や問題解決に力点をおかなくても、気持ちの部分で受け止めることはできている」


■“相談の文化”どう根付かせるか?

 日本の若い世代の自殺が多いことについて専門家は―

 「日本は先進諸外国にくらべて相談の文化が根付いていなかったり、(相談への)偏見がまだ強いと思います。今の若者はSNSの親和性が非常に高いので、SNSを相談のフィールドにしていく」(明星大学 心理学部 藤井靖准教授)

 長野県では9月、中高生を対象に無料通信アプリ「LINE」での相談窓口を開設した。すると、相談件数は2週間で547件と年間の電話相談件数の2倍以上になったという。現在、滋賀県大津市でも試験的にLINE相談が行われ(2018年3月31日まで)、若い世代が相談する選択肢が広がりつつある。

 悩んでいる若い世代と“信頼できる大人”をつなぐ手段をどう増やしていけるかが課題となっている。