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介護現場に外国人実習生 その課題とは?

2017年11月6日 15:37
介護現場に外国人実習生 その課題とは?

 11月から新しい法律が施行され、人手不足が続く介護の現場で外国人が実習生として働くことができるようになった。これにより人手不足の解消が期待されているが、課題も指摘されている。


■たちはだかる言葉の壁

 外国人が日本で働きながら技術を身につけ、母国で活躍してもらう“外国人技能実習制度”。これまでは農業や建設業などだったが、新たに“介護”の分野が追加された。

 これは、2025年には団塊の世代すべてが75歳以上になり、全国で約38万人の介護職員が不足するという見通しが背景にあるとみられている。

 しかし、人を相手にサービスをする職種ならではの課題もあるという。神奈川・小田原にある施設では、2008年度から始まったEPA(=経済連携協定)で、フィリピンから来た介護職員が働いていて、職員の約3分の1を占めている。

 日本語で日常会話は問題なくできるが、介護現場で働くにはそれでは足りないという。日本人介護福祉士はこう話す。

 「日本語の細かい表現、『苦しいのか』『痛いのか』『ズキズキするのか』。そういうところを入所者さまが(外国人職員に)うまく伝えられなかった」

 現在、日本で働いている多くの外国人職員は、日本語検定の2級か3級のレベルだが、それでも、日本語で意思疎通を図るのが難しい場面もあるという。

 そこで、この施設では日本語の細かい表現も理解できるように毎日、業務日記を書く練習をさせ、それを添削するなど、外国人職員のレベルアップに力を入れている。


■人手不足の穴埋めではなく“育てる”

 一方、今回の技能実習制度で来日する人たちは、日本語能力の基準を下げた4級で働き始めることができる。それにより、受け入れる日本人職員の負担が増え、専門家は介護の質の低下につながる懸念もあるという。

 さらに、日本の介護職員の賃金を上げ、受け入れる施設には意識改革が必要だという。淑徳大学・総合福祉学部の結城教授はこう語る。

 「実習生を労働力として考えるのではなく、研修生として“育てる”。研修をしっかりすることで、(実習生の)モチベーションも上がる」

 単なる人手不足の穴埋めや安価な労働力として考えるのではなく、実習生を“育てる”ことで、最終的に私たちが質の高い介護を受けられることになるということだ。