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輸入減…サーモンを増やすためにできること

2017年11月3日 19:55
輸入減…サーモンを増やすためにできること

 -東京都内の飲食店。板前が包丁を入れているのはサーモン。鮮やかな“色味”に日本人好みの“脂のノリ”。宮城県の三陸沖では稚魚の放流が今週から始まっている。しかし…。

 サーモンの世界市場に詳しい鹿児島大学水産学部・佐野雅昭教授「(サーモンは)全世界で取り合いになってきてますから」「安くたくさん食べることは、これまでのようにできなくなっているのが現状です」

 今後、サーモンが足りなくなる可能性があるのだ。サーモンを増やすため、今、何ができるのか。中央大学法科大学院・野村修也教授と考える。

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■世界でサーモンの需要増…日本は?

 世界のサケやマスの生産量は近年、養殖技術が急速に進歩したことで、1996年以降は養殖のものが天然物を上回って急激に増えている。ところが、日本でもおなじみのトラウトサーモンの輸入量は、2001年をピークに急激に減少。去年はピーク時の4分の1以下にまで落ち込んでいる。

 様々な要因が考えられるが、一つには、欧米や中国、東南アジアなどでも日本と同じようにサーモンを生で食べるようになったことがあると言える。つまり、生でもおいしく食べられる養殖サーモンのニーズが増えて高値で取引されるようになり、日本が競り負けているということなのだ。


■“国内での養殖”強化を確認も課題は…

 このままでは今までのように手頃な値段でサーモンを食べるのは難しくなるかもしれない。そこで、水産庁は1日、日本での養殖に携わる生産者や自治体の関係者らを集めて、今後を話し合う会議を初めて開いた。日本を取り巻く厳しい輸入状況も踏まえて、打開策としてサーモンの“国内での養殖”をより進めることを確認して、そのためには何が必要かを話し合った。

 ただ、日本でのサーモンの養殖をめぐる環境は、海外ほどは進んでいない現状がある。宮城県は1970年代にサーモンの養殖を始めた国内では先駆け的な存在。今は海上で養殖を行っているが、出荷が終わる夏前までに海水温が20℃以上になると死んでしまうリスクがあるため、常に監視が必要だという。そして、病気への対応でも課題を抱えている。

 宮城県漁協経済事業部・奥田良夫次長代理「血液の血小板の中にウイルスが付着し、肝臓の方に行って死んでしまう病気。どこの製薬会社が(ワクチンを)作ってくれるかは決まっていません」

 サーモンがかかる病気は主に2つあるということだが、1つに対してはワクチンがまだ販売されていないという。

 水温の管理、ワクチンの開発のほかに、エサ代の問題も。一番大きいのが魚粉だが、価格が高騰していることなどクリアすべき課題がいくつかある。こうしたところにコストがかかりすぎると、海外との価格競争に勝てるのかという声も上がっている。なかなか一業者では解決できない問題だ。


■“安くておいしいサーモン”を守るためには

 そこでポイントとなるのは「オールジャパンでの生産体制」。実はここ数年、日本国内では、サーモンの養殖に乗り出す事業者が増えている。ただ、その多くは採算が取れていない状況だ。より効率よく養殖できる技術の研究やワクチンの開発はオールジャパン、つまり日本全体で知恵を出し合って進める必要がある。

 私たちの食卓から“安くておいしい”サーモンが消えないように、国を中心とした生産体制の構築を進めてほしい。