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ロシア優先課題「極東開発」その厳しい現実

2017年9月22日 13:29
ロシア優先課題「極東開発」その厳しい現実

 ロシアのプーチン大統領は、極東地域の開発を国の優先課題と位置付け、日本などからの投資を呼びかけている。しかし、その開発には厳しい現実があった。

 今月7日、安倍首相とプーチン大統領の19回目の首脳会談が行われたロシア極東のウラジオストク。NNNは今月、ウラジオストク中心部から車で1時間ほど離れたある場所を訪ねた。

 そこにあるのは真新しい巨大な建物。建物の中に入ると、そこには大量のスロットマシンが…。実はここ、ロシア最大のカジノ「ティグレ・デ・クリスタル」。今回、客が少ない午前中に限り、特別に撮影を許可された。

 オープンはしたのは2015年10月。地元・ロシアや中国を中心に年間36万人以上が訪れ、今年前半の売り上げは前年比20%増と経営は順調だという。

 カジノ経営会社・ツィフェタキス上級副社長「開業からわずか2年ですが、経営はうまくいっています。我々は日本市場の開拓に取り組んでいます。見通しはとても前向きです」

 カジノ建設の目的は、多くの外国人観光客を呼び込み、極東の開発につなげることだ。

 “極東開発”はいま、ロシアの最優先課題の一つとなっている。極東地域は経済の低迷と厳しい自然環境から、ソ連崩壊後の25年間で人口が約180万人も減少するなど衰退が深刻となっている。

 隣接する中国の経済発展にのみ込まれる懸念もあり、これを食い止めることが重要な課題になっている。

 今月、ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」。極東に投資を呼び込むため、プーチン大統領の肝いりで2015年に始まった。

 ここに日本の協力に期待する「あるもの」が展示されていた。魚のエイをモデルにしたという海産物の市場の模型だ。地元政府が観光・商業施設にすることを目指して、海産物の扱いにたけた日本に協力を求めている。

 市場の建設予定地には今年7月、日本の大手すしチェーン「すしざんまい」を経営する木村清社長の姿があった。計画への協力を検討するため、現地視察に訪れたという。

 木村社長「ロシアの皆さんと日本と平和で仲良くやっていける架け橋になるようなお仕事に携われればと思っております」

 プーチン大統領は今月、安倍首相や韓国の文在寅大統領、アジアの企業関係者らを前に、極東開発の重要性を訴えた。

 プーチン大統領「この地域の迅速な発展と改善は我々の優先的目標の一つであり、ロシアの競争力、経済、人的資源の発展を目指す戦略の重要な要素だ」

 アジアの経済発展の恩恵を取り込んで、極東の発展につなげること。ロシアが抱く理想の展開だが、現実はそう簡単ではない。

 ウラジオストクに建設中のある高級ホテルは本来、5年前のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に合わせて完成する予定だった。

 ところが、ロシアの大型投資案件にはつきものとも言える、建設費をめぐる汚職など、不透明な資金繰りから工事は大幅に遅れ、まだ完成していない。

 カジノの周辺もホテルや商業施設が立ち並ぶ一大観光地となる計画だが、ほとんど開発は進んでいない。

 ロシア独特の商習慣や法律、ウクライナ問題をめぐる制裁が、企業に大型投資を躊躇(ちゅうちょ)させているとの指摘もある。ロシアが思い描く極東発展の道のりは簡単ではない。