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“ソニーの頭脳”が語る人工知能の未来図1

2017年9月4日 20:18
“ソニーの頭脳”が語る人工知能の未来図1

 キーワードを基に様々なジャンルのフロントランナーからビジネスのヒントを聞く「飛躍のアルゴリズム」。今回はソニーコンピュータサイエンス研究所社長・北野宏明氏。AI研究の第一人者が、人工知能の過去と今、そして未来を語る。


■北野宏明氏のプロフィール

 1961年生まれの56歳。1993年にソニーコンピュータサイエンス研究所に入社し、早くからAI(人工知能)などの研究に携わってきたAIの第一人者。また、今年で20周年を迎えた国際的なロボットの競技大会「ロボカップ」を立ち上げた一人でもあり、ソニーのエンターテインメントロボット「AIBO」の開発ではアドバイザーを担当した。


■「楽しいロボットを創ろう」

――1つ目のキーワードは「最初のAIBOはゴキブリ!?20万台以上売れたわけは…」ということで、このゴキブリというのは気になりますが、まずは、そもそもAIを使ったロボットはどうして生まれたんでしょう。

 当時ソニーは、新しいソニーのコンピューターワークステーション「ニューズワークステーション」が非常にヒットして売れました。その次にデジタル技術を使って、コンピューターじゃないものをつくろうという話になったんです。

 その時に何ができるかということで、まあロボットというのがひとつの候補に挙がったわけですね。まあ、企業ですから5年ぐらいで商品化しないといけませんから、その時のロボットの技術では、その時間軸で「何ができます」というほど作れる感じはあんまりなかったです。

 それで、そうではなくて、やっぱり“持っていただいて、楽しんでいただくもの、それ自体が商品性があるもの”を作ろうということになりまして、エンターテインメントロボット、人間とインタラクションして楽しいロボットを作ろうということになって、開発が始まったんです。


■6本足にするとゴキブリに(笑)

――AIBOは、本当にかわいくて、初めて見たときにびっくりしましたけれど、最初からあんな形だったんですか?

 いや、実はプロトタイプは6本足だったんです。ソニーのあの藤田と景山という2人が実際に手を動かして作ったんですけど、まあ「うーん」と。「もうちょっと改良しようよ」と言って、2週間くらいして、すごくよく動くような6本足のロボットだと、ゴキブリに似ちゃったんですよ(笑)。

 新聞の一面に「ソニーゴキブリロボット」ってあると、それよくないねってなって(笑)。で、これはなんとかしなきゃいけないということで1~2か月したら、今度は4本足のロボットができまして、4本足だといきなりかわいくなりまして、「あ、これはいけるかもしれないな」と、そういう経緯でしたね。


■AIBOは人工知能が重要だった

――見た目以外にも、もちろんこだわったことがたくさんあるんですよね。

 それは「自律性」。要するにロボット自体が自分で周りと相互作用する、ここは歩き、ここは歩いていかない、飼い主と(オーナー)とインタラクションするという、そういうところに、すごくこだわりましたね。だから、「自律型ロボット」として、多く売られたものとしては世界で初めてなんです。

――ものすごい売れたロボットだと思いますが、私たちはあのロボットとAIというものは、すぐには結び付いていなかったんですが、実はそこが大事だったんですよね。

 そうですね。自律型というのは、自分で周りの状況を認識・判断して、何かの反応をするということが必要ですから、ここで学習や意思決定であるとか、周りを認識するとか人工知能の基本的な機能というのがそこに入っていないと、成り立たなかったわけですね。

 ですから、AIBOの開発は、メカの部分も重要だったんですが、人工知能部分というのが非常に重要で、当時の最先端の人工知能技術というのを投入したということになります。