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障害ある人、仕事にかける思い

2017年8月24日 18:09
障害ある人、仕事にかける思い

 北海道芽室町では、障害のある人が元気に働くことのできる町づくりを目指している。今年春からは、町役場で職員として働きはじめた人もいる。彼らの仕事にかける思いとは。

 諏訪中央病院の鎌田實名誉院長は先月、芽室町を訪れた。芽室町は障害者の雇用に本格的に取り組んでいる自治体の一つで、鎌田さんは半年前にも訪れているが、今回、障害のある人たちの職場を訪ね、仕事に対する思いを直接聞いた。

 鎌田さんが訪れたのは芽室町の国民宿舎「新嵐山荘」。

 ここでは、知的障害のある粟野功好さん(34)と中新田由希さん(22)が働いている。2人は主に客室の清掃やベッドメーキングなどを担当。粟野さんは今年1月から働いていて、6月から働き始めた、中新田さんの指導係も任されている。

 鎌田さん「ベッドメーキングする時は、何を彼女に教えながら、注意している?」

 粟野さん「僕もそこまで余裕がある立場ではないですけど、とりあえず、ピシっと丁寧にやろうと」

 中新田さんは現在、実習期間中で、本採用を目指して働いている。

 鎌田さん「中新田さんの夢は何?」

 中新田さん「とりあえず自立すること。親の手を離れて、ちゃんと一人暮らしができるように頑張りたい」

 知的障害がありながらも、一般の企業や官公庁で働く一般就労の夢をかなえた人もいる。芽室町役場の総務課で働く森寛幸さん(28)だ。

 今年2月に鎌田さんが取材した時、森さんは「九神ファーム」という職業訓練を行う事業所で食品加工の仕事をしていたが、4月からは町役場の職員として書類のチェックや資料のコピーなど事務の仕事を担当している。

 森さんの上司である総務課の側瀬美和課長は森さんの今後について、「彼ができる仕事、できそうな仕事をさがして、役場全体を巻き込んでやっていくことが、これから大事なので」と話す。

 森さんが以前働いていた事業所「九神ファーム」の農場を訪れた。職員の川本明宏さん(21)。実は発達障害があり、以前は障害のあるメンバーとして働いていたが、2015年に事業所の職員となり、今では障害のあるメンバーを支援する側として働いている。

 鎌田さん「障害の手帳を返したの?」

 川本さん「持っていると、障害者だということに甘えてしまいそうだったので、持ってないほうがいいかなと思って返還というか」

 川本さんは職員になるにあたり、心の区切りをつけるために、税金の控除や就職時に配慮が受けやすくなる「障害者手帳」の返還を決めたという。

 川本さん「少しでも、この会社のメンバーたちの、ある程度目標になれればいいなと」

 「守られる人が、社会支える」――森さんの上司である総務課の側瀬課長は「森くんがいることでかたい職場が和んだり、癒やされることがある」と話していた。

 彼らが生き生き働くことで社会全体が温かく、明るくなる。「障害があるから」といって「私たちが守ってあげなくちゃ、助けてあげなくちゃいけない」と思いがちだが、逆に「大事なモノを与えられている、支えられているんだ」ということを知ってほしいと思う。