×

中国空母「遼寧」香港で公開 その狙いは…

2017年8月18日 15:37

 中国への返還から20年を迎えた香港に先月8日、中国初の空母「遼寧」が寄港し、その内部が初めて香港市民に公開された。そこには中国の「ある狙い」があるとみられている。

 先月、香港に到着した「遼寧」。中国への香港返還20年を祝うもので、兵士らは「ニイハオ 香港」という人文字を作り、市民へ友好的なメッセージを表現した。

 やってきた空母に、香港市民らは大興奮。湾を一望できる高台には、大勢の人が集まっていた。

 香港市内の模型店では「遼寧」の大きなプラモデルが販売されていた。店主は「『遼寧』が来たから、よく売れています。(在庫を)聞く客も多いです」と話す。

 中国製という大型のプラモデル。値段は約1万3000円と高額だが、艦載機の模型とともに大人気だという。

 この日、約2000人の市民が初めて空母への乗船を許された。市民への一般公開は中国本土でも例が無く、異例のことだった。

 香港メディアは「空母の香港寄港は習近平国家主席自らが決めた」と報じた。その狙いとは。

 空母がやってきた1週間前の先月1日、香港中心部では約6万人が、民主的な政治を求めて大規模なデモを行った。市民は、イギリスから返還された際に認められたはずの高度な自治「一国二制度」が中国に脅かされていると警戒感を強めている。

 デモ参加者の中には、イギリス領時代の香港の旗を掲げる「香港独立」を主張する団体の姿も見られた。

 「香港独立」を主張する男性「今の政治体制の下では、香港市民の利益や尊厳を守ることは不可能だと思う」

 市民の多くは「独立主張は過激で、非現実的」と受け止めるが、中にはこんな意見もある。

 市民「私は中立ですが、今の香港社会で独立を主張する人がなぜ増えたのか、考えるべきです」

 こうした中で、巨大な空母や戦闘機を市民に披露することには、香港市民の愛国心を高め、中国への支持を広げる狙いがある。

 空母の寄港に合わせる形で、中国軍の基地も市民に開放されていた。基地を訪れた多くの人の目当ては「軍艦」だ。空母を守る3隻の軍艦に設置されたミサイルの発射口や機関砲などを見て、歓声を上げる市民もいる。

 小雨が降る中でも甲板から、なかなか降りようとせず、案内にあたった兵士らと一緒に記念写真をとり、握手を求めていた。

 また、会場には特に子供たちが長い列を作ったコーナーがあった。展示されていたのは本物の自動小銃。大小様々な種類の銃を前に、兵士が扱い方を説明。子供たちの手をとるなどして教えると、まだ幼い子らが興奮した様子で銃を構えていた。

 実はこうした軍との交流イベントは毎年行われていて、香港の若者たちの愛国心を刺激する機会になっているのだ。

 参加した市民「中国は強い軍隊を持っていて、誇りと栄誉を感じます」

 徐々に進んでいく香港の「中国化」。中国は今後も様々な機会を通じ、香港市民に中国人としての意識を持つよう働きかけていくものとみられる。