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民主化で変わる ミャンマーの国営放送局

2017年8月4日 14:33
民主化で変わる ミャンマーの国営放送局

 アウン・サン・スー・チー氏が国家最高顧問として率いるミャンマー。民主化が進み、国が変わりゆく中で、かつては軍事政権の声を伝えた国営放送局にも変化が表れている。

 去年発足した、ミャンマーのスー・チー氏が率いる政権。少数民族問題など多くの問題を抱えながらも、市場開放などを受けて海外からの投資が増え、経済が発展するなど国は変わりつつある。

 変化は放送局にも出ている。ミャンマーの首都・ネピドーから車で走ること約1時間。都市部から離れた森の中に見えてきたのは、ミャンマーの国営放送局「MRTV」。

 以前は軍事政権が公式発表などを伝える場として使われていたが、民政に移管されて以降、国が放送する内容などに強い影響力を持つ「国営放送」から、より自立した「公共放送」へと変わる方針が打ち出されている。

 MRTVで記者として働く、イースーモンスー記者(30)。元々は別の部署で勤務していたが、約5年前、希望していた記者になったという。

 イースーモンスー記者「メディアは人と政府の間にある、かけ橋になるべきだと思います。だから私は、この仕事に就きたいと思っていました」

 実は、この公共放送化に向けてMRTVを支援しているのは、日本だ。日本から派遣されたテレビ報道の専門家らが「自ら取材して原稿を書く」ということなどについて、MRTVの現役の記者らに説明した。

 今回、NNNの松永新己記者も、現役記者として取材の進め方などについてレクチャーし、彼らの取材にも同行した。

 この日、取材に選んだテーマは「タマネギの価格高騰」。去年、ミャンマーで発生した大雨の影響で、タマネギの価格が例年より高くなっているというものだ。

 公共放送化に向け取材するテーマも生活密着型のものも増えてきた。タマネギはミャンマーの料理に欠かせない野菜で、価格は市民の大きな関心事だ。以前に比べ、こうした市民目線のテーマを自分で選び、取材することが増えたという。

 訪れた町の食堂で、店員に現状を尋ねる。

 イースーモンスー記者「タマネギの価格は高くないですか?」
 店員「ええ、高いです」
 
 イースーモンスー記者「価格が下がる気配はありますか?」
 店員「まだ下がってないですね」

 MRTVに戻ってからは編集作業。取材現場で聞いた話をどう生かすか、考えながらの編集となる。

 イースーモンスー記者は、MRTVが変わるためにも市民の側に立つことが重要だと考えている。

 イースーモンスー記者「MRTVは以前、政府の側に立ったメディアで、市民もそう思っていました。(公共放送になるためには)記者が市民の元へ出向き、一般の人々が何を求めているかを聞かなければいけません」

 変わりつつあるミャンマー。かつての「軍事政権の声」は「市民の声」へと変わろうとしている。