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「宇宙大国」開発急ぐ中国、様々な問題も…

2017年7月28日 15:28
「宇宙大国」開発急ぐ中国、様々な問題も…

 中国で今月初め、人工衛星を搭載した大型ロケットの打ち上げが行われた。「宇宙大国」を目指して技術開発を急ぐ中国。一方で、様々な問題が浮上している。

 中国南部の海南島。国内屈指のビーチリゾートとして、毎年多くの観光客が訪れるこの島には、もう一つの顔がある。「文昌宇宙衛星発射場」。3年前に新たに建設された中国の宇宙開発の拠点だ。

 今月2日、大型ロケット「長征5号」の打ち上げが、中国メディアだけでなく一部の外国メディアにも公開された。「長征5号」は、中国独自の宇宙ステーションの建設や月面探査に使われる最新鋭のロケットだ。

 普段は招かれない外国メディアに取材を許可した背景には、「中国が宇宙技術を軍事に転用するのではないか」との各国の疑念を払拭し、宇宙開発の進歩をアピールする狙いがあるとみられる。

 ロケット打ち上げの前日の今月1日。中国への返還20周年を迎えた香港でも、中国の宇宙開発の歴史についての展示会が行われていた。

 展示会に来た子連れの女性「子供たちはテレビでは見たことがありますが、実際に見せると、とても印象に残るでしょう。祖国はすごく偉大だってね」

 香港では一部の市民の間で、中国による政治介入への不信感が高まる中、こうした展示を行うことで“偉大な中国”という姿を浸透させようという狙いも透けて見える。

 一方、「長征5号」が打ち上げられる海南島でも、住民の間に不満がくすぶっている。

 地元の男性住民「ロケットの発射はうれしい。国や政府や地元にも良い面がある。でも、私たちの生活にも関心を持ってもらいたい」

 男性は元々、発射場になった土地で農業を営んで暮らしていた。しかし、立ち退くように命令され、わずかな補償金と住宅を引き換えに、強制的に移住させられたという。

 同じような境遇の人は約6000人にも上るという。男性は「移り住んでも、生活ができない。どうやって生きていけばいいんだ」「生計を立てるすべもなく、宇宙開発の犠牲になった」と訴えた。

 ロケット打ち上げが迫った発射場。集まった多くの人が、ロケットが光を放ちながら空高くのぼる様子を見守った。

 ロケット打ち上げを見た女性「打ち上がっていくときに、みんなが国歌を歌いました。祖国はすごいな、力があるなと感じました」

 しかし、「長征5号」は発射直後にトラブルがあり、打ち上げは失敗に終わったと発表された。4週間が過ぎた今も、原因は明らかにされていない。

 ロケット打ち上げは先月にも失敗しており、一部の中国メディアは「失敗の原因を究明しないまま開発を急いだ」と指摘している。

 様々な問題を抱えながら、中国は習近平国家主席の大号令の下、「宇宙大国」という国家の目標に突き進んでいる。