×

配偶者が有利に?「遺産分割」改正案

2017年7月21日 19:14
配偶者が有利に?「遺産分割」改正案

 多くの人が関わる遺産相続。そのトラブル件数は年々増え続けている。こうした中、法務省は相続の仕組みを変えるための会議を開催。高齢者が安心して暮らすための法整備に向けた試案が18日にまとめられた。


――相続についての会議、具体的な内容は。

 民法の中にある相続に関する規定を、家族関係の変化や高齢化社会の新しい課題にふさわしい形で改正しようとするものだ。改正案のポイントはいろいろあるが、今回は配偶者の保護を強化する部分を取り上げる。

 まずは「遺産分割」についての改正案。例えば70代の夫と妻、独立して暮らす息子の3人の家族のケース。夫が亡くなった時、その遺産を各相続人たちで分け合うのが遺産分割だ。

 夫が特に遺言をしていない場合、相続財産は法律の定める割合で分けられる。このケースでは配偶者にあたる妻が2分の1、残りの2分の1を子にあたる息子が受け取る仕組みとなる。

 夫の相続財産が2000万円の家と1000万円の現金だったとすると、合計3000万円を妻と息子が半分の1500万円ずつ相続することになる。しかし、場合によっては家を売って現金にする必要が出てくるので「妻の生活が不安定になる」と問題視されていた。

 そこで、今回の改正案では夫婦の婚姻期間が20年以上であって、故人が配偶者に住居を生前贈与するか、遺言で贈与の意思を示した場合には、贈与された家は相続財産から外すことが提案されている。

 この改正が成立すれば、上記のケースでは、妻が2000万円の家をもらうほか、残りの1000万円の現金を2分の1ずつ分けることになるので、妻は家を含めて合計2500万円の遺産を相続できる計算になる。


――婚姻期間が20年以上ではない夫婦など条件を満たさない場合はどうなるのか。

 遺産分割が終わるまでは配偶者が家に住み続けられる権利、亡くなった夫が遺言などで意思を示した場合、妻がそれまで住んでいた家に居住し続けられる権利が守られることが明文化される予定だ。


■生前贈与や遺言の活用も

 改正案はあくまでも、亡くなった夫が生前贈与や遺言などで配偶者に家を残す意思を示した場合に適用される。したがって、従来通りの遺産分割のままにすることも可能だ。また、遺言を活用すれば、ほかの相続人の遺留分を侵害しない限り、子供のほうに多くの財産を残すこともできる。

 相続のことは、どうしても考えないようにしがちだが、元気なうちに自分の相続のことを考えることも大事だろう。