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英・国民投票から1年 EU離脱交渉の行方

2017年6月24日 18:54

 イギリスがEU(=ヨーロッパ連合)からの離脱を決めた国民投票から23日でちょうど1年となった。しかし1年たっても議論は深まっておらず、交渉期限に間に合うのか疑問視する声も出ている。

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 イギリスの北アイルランドに、島国イギリスが唯一、陸地でEUと国境を接する場所がある。イギリスとアイルランドはEU加盟国同士であるため、「共通往来地域」が設けられていて、入国審査や通関チェックはない。白いナンバーのアイルランドの車も黄色いイギリスナンバーの車も自由に国境を行き来している。

 国境の近くのショッピングセンターでは、この1年で変化が。EU離脱決定以降、イギリスの通貨ポンドが安くなったことで国境を越えて来る客が3割増えたという。

 アイルランドから来た女性「ユーロの両替レートがいいときは北アイルランドの店に行くわ」

 アイルランドから来た男性「月に3~4回は国境を越えて来ているよ」

 しかし今、この国境線が大きな問題となっている。

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 今月19日にいよいよ始まったイギリスとEUの離脱交渉。最大の議題のひとつが、離脱後にこの国境線をどう管理するか。

 イギリス・デービス離脱相「北アイルランドとアイルランドの(国境の)問題に最も時間がかかった」

 EU加盟国と非加盟国の境界線として国境管理が厳しくなれば、深刻な影響が予想される。現在のところ、イギリス、EUともになるべく国境のルールを維持したいとしているが、具体的にどうするのか、その答えは出ていない。

 ショッピングセンター支配人「毎日数千人が国境を越えています。(国境管理の厳格化を)求めていません。(地域を)不安定にしてしまう」

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 一方、国民投票から1年がたった今、「時間」も大きな問題となっている。離脱交渉の期間は原則、再来年の3月まで。しかしEU側は交渉結果の国内承認に時間がかかるとして、来年10月までの合意を求めている。

 残りは1年4か月。はたして間に合うのか。私たちは、TPP(=環太平洋経済連携協定)の交渉で日本の首席交渉官として難しい交渉をまとめ上げた通商交渉の第一人者、鶴岡駐英大使に話を聞いた。

 鶴岡公二駐英大使「交渉は始めてみないと本当のところで何が一番難しいのかなかなか見えてこないところがある。これはどうしても時間がかかる」「交渉期間として1年はもちろん、2年でもなかなか容易ならざる期限ではないかと思っている」

 また、鶴岡大使は、日本企業のためにも順調な交渉を望むと述べた。

 鶴岡公二駐英大使「日本企業のこれまでの順調な活動ができる限り維持され、それが可能になるような結論に至ってほしい」

 国民投票から1年がたってもイギリスとEUの将来像は見えておらず、交渉がスムーズに進むかは不透明だ。