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「風疹」夫も注意 妊婦感染で“子に障害”

2017年6月22日 20:28
「風疹」夫も注意 妊婦感染で“子に障害”

 6~7月にかけて流行のピークを迎える「風疹」。せきやくしゃみで感染するが、妊娠初期の女性が感染すると、生まれた子どもに障害が出る可能性がある。しかし、注意しなければならないのは、女性だけではない。特にある世代の男性は注意が必要になる。


■「中絶を…」医師の言葉にショック

 神戸市に住む西村さん一家。4歳になる長女、葉七ちゃんは、視力が低い弱視で、メガネをかけても視力は0.8だ。原因は、母・麻依子さんが妊娠7週目の時、風疹に感染したこと。おなかの中にいた葉七ちゃんも風疹のウイルスに感染し「先天性風疹症候群」と診断された。

 麻依子さん「(産婦人科で)目と耳と心臓に大きな障害が出るので、産むほうがおかしい、中絶をするようにと言われました」

 風疹にかかれば中絶、とは定められていないが、麻依子さんは医師の言葉にショックを受けた。

 麻依子さん「風疹にかかってはいけないというのは分かっていたけど、子どもの命を奪うほどの重大な事と思っていなかったので、急に産んではいけないと言われて頭が真っ白になりました」


■産むことを決意―

 西村さん夫婦は生まれてくる命を大切にしたいと産むことを決めた。予定より1か月以上、早く生まれた葉七ちゃんの体重はわずか1582グラム、心臓には穴がみつかり、脳には異常が見られ、発達障害のおそれがあると告げられた。

 麻依子さん「自分が風疹にさえかからなければ、娘に大変な思いをさせることはなかったのに、入院しているベッドに帰って『申し訳ないことをした』と泣いたことを覚えています」


■夫も感染していた

 実は、夫婦のどちらが先に感染したのかは分からないが、夫の玄樹さんも風疹に感染していた。

 夫・玄樹さん「僕らのそういった防げたはずのことが色んな知識があれば防げたことが、赤ん坊、葉七には申し訳ないことをした」

 風疹の症状のひとつ「発疹」が体中にできた時、初めて風疹の予防接種を受けていなかった事を知った2人。実は、西村さん夫婦のように予防接種を受けていない世代が多い。


■30歳以上「接種してない世代」が危ない

 今、30歳くらいまでの人は多くが予防接種を受けている一方で、西村さん夫婦の世代にあたる30~38歳は、接種した人は少ない。定期接種の対象ではあったが、中学生の時に各自で接種しなくてはならなかったためだ。

 さらに、38歳から55歳の男性は、定期接種の対象ではなかったため接種を受けていない。このため、30代から50代、特に男性が、風疹に対する免疫がなく感染しやすい。


■主な感染ルートは「夫」や「同僚」

 産婦人科医である平原氏は「大人が風疹に対しての抵抗力がないことを自覚すること。用心深く考えながら会社で働くということを考えて欲しい」と、働き盛りの男性にも予防接種を受けてもらうことが望ましいと話す。

 国立感染症研究所の調査によると、風疹が大流行した2013年に感染した女性の感染ルートを調べたところ、最も多かったのは、夫からで、次に多かったのは同僚からだった。こうした中、国は、風疹の対策強化に乗り出している。

 「風疹は子ども病気ではなくて、中年の病気、あるいは、勤労者の病気といった方が良いです」―厚生労働省は21日、セミナーを開き、企業の担当者に予防接種の必要性などを呼びかけた。しかし、多くの企業にとっては予防接種の費用負担をするのは難しいのが現状だ。


■社会全体で予防に取り組む必要がある

 「先天性風疹症候群」と診断された葉七ちゃん。生まれた時に見つかった心臓の穴は、自然になくなったというが、西原さん夫婦は将来への不安を募らせる。

 麻依子さん「今後出てくるかもしれない(障害)というのは聴覚。聴力が落ちるかもしれないということ。弱視で見えないまま一生ずっと過ごしていかないといけないかもしれないと言われている」

 玄樹さん「拡大のきっかけを作っているのは男性が多いと思うので、そんな中でも自分のミスというか、認知の低さでこういうことを招いてしまったので」

 妊婦と生まれてくる子どもを守るために、社会全体で、風疹予防の取り組みを強化することが求められている。