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皇太子さま デンマーク訪問に際して(1)

2017年6月14日 3:36
皇太子さま デンマーク訪問に際して(1)

皇太子殿下デンマーク国御訪問に際しての記者会見録

平成29年6月13日(火)17:19~17:46
東宮御所檜の間

【宮内記者会代表質問】
【問1】
 日本との外交関係樹立150周年を迎えたデンマークを訪問されるに当たり、抱負をお聞かせください。殿下は平成16年にフレデリック皇太子殿下の結婚式に参列され、天皇、皇后両陛下や他の皇族方もたびたび訪問されるなど、日本の皇室ともゆかりの深い国です。デンマーク王室との交流について、ご自身の思い出や、両陛下からお聞きになっている話がありましたらご紹介ください。雅子さまは今回、同行を見送られましたが、その理由と現在のご体調、今後の外国訪問の見通しについてもお聞かせください。

     ◇

 この度、デンマーク国政府から御招待をいただき、「日デンマーク外交関係樹立150周年」名誉総裁として同国を訪問できますことを、大変うれしく思っております。御招待に対して、心から感謝いたします。私にとりまして、デンマークへの訪問は、平成16年にフレデリック皇太子殿下の御結婚式に参列するために同国を訪れて以来ですので、13年ぶりになります。

 今回の訪問は、日デンマーク外交関係樹立150周年という記念すべき年に行われます。両国の間では、1867年に修好通商航海条約が締結されて以降、様々な分野で幅広い交流が行われてきました。そして、150周年となる本年は、1年を通じて、さらに多くの交流行事が既に実施され、あるいは、今後実施される予定と伺っております。私自身も、今年2月、国立西洋美術館において開催された「スケーエン:デンマークの芸術家村」展に、雅子とともに出席いたしました。そこでは、当時訪日中だったボック文化・教会大臣を始め、多くの関係者が一堂に集い、150周年を祝う姿がとても印象的でした。そしてまた、今まであまり知ることのなかった、デンマークの画家の作品を多く鑑賞することができました。これまでのところ、この展覧会を含め、両国における記念事業はいずれも順調に行われてきていると伺っており、今回の訪問中、デンマークで行われる様々な記念事業に出席することを楽しみにしております。

 デンマークについては、平成16年の訪問前の会見の折にも、社会福祉の先進国で、国際的な人道支援にも積極的、女性の社会進出が目覚ましい、といった点を挙げましたが、その印象は、13年を経た今日でも大きく変わってはおりません。同国では、引き続き、子供や高齢者、障害者などの社会的弱者に配慮した福祉政策、女性が社会で活躍しやすい環境づくり、地球温暖化対策といった環境保全面での先進的取組など、国際社会が抱える諸課題に対処するために、既存の考え方や決まりごとに縛られることなく、良いと思えば積極的に取り入れ、変えるべきことは躊躇(ちゅうちょ)なく変えることによって、革新的な取組を進めており、国際社会にとって参考となる点は非常に多いと承知しています。また、デンマークは、童話作家のアンデルセンを始め、文学や学術、音楽といった面で著名な方を輩出している国としても有名です。アンデルセンの童話には幼少の頃から親しんでいましたが、音楽の分野では、昭和56年にマルグレーテ2世女王陛下及びヘンリック王配殿下が国賓として訪日された折の答礼晩餐会において、カール・ニールセンの曲が演奏され、とても印象的な曲であると感じたことを思い出します。また、昨年NHK交響楽団の演奏会で、同じニールセンの交響曲第5番を聴いたのもデンマークとの御縁を感じます。

 このような背景の下、今回のデンマーク訪問において、特に私が関心を払っていきたいと思っている点についてお話ししてみたいと思います。

 まず、今回の訪問を通じて、我が国とデンマークの間に培われてきた交流の歴史に思いをはせたいと思います。両国間では、長きにわたり、王室と皇室の間、両国の政府・国民の間で幅広い交流が行われてきました。その中には、1957年2月、和歌山県日ノ御埼沖で炎上していた徳島県の木材運搬船「高砂丸」の日本人船員の命を救おうとして自らの尊い命を落としたデンマーク貨物船エレン・マースク号のヨハネス・クヌッセン機関長の勇敢な行動をたたえるために、毎年日ノ岬で2月に行われている慰霊献花式もあります。また、今回訪問するオーデンセ市と千葉県の船橋市は、1989年に姉妹都市提携に調印し、その後、船橋市には、オーデンセ市の協力を得て整備された「ふなばしアンデルセン公園」が開園し、週末になると家族連れでにぎわっていると聞いています。さらに、今回視察予定の「王室における日本」展では、両国の王室と皇室の親密なつながりを示す様々な展示物を見ることができると伺い、楽しみにしています。また、在留邦人や、日本にゆかりのあるデンマーク人といった方から、両国の交流の歴史と現在の状況についていろいろとお話を伺えればと思っております。

 第二に、この1年を通じて両国で様々な記念事業が開催されますが、それらを契機として、今後両国間の交流と友好親善がさらに深まることを期待しております。特に、今回の訪問では、三分一博志氏の建築展や「日本から学ぶ」というデザイン展を視察する予定のほか、同じく視察先のアンデルセン博物館が現在計画している改修では、日本人の建築家・隈研吾氏が設計に携わっていると伺っています。このように、文化、芸術分野をはじめとして、日本とデンマークがお互いに影響を与えながら、その質を高めてきたことを改めて認識するとともに、今後の交流と友好親善の促進に貢献できればと思います。また、東日本大震災の直後、フレデリック皇太子殿下が宮城県の東松島市を訪問されたことをきっかけとして、両国の市民の間で温かい交流が続いていると承知しております。今回の訪問により、そうした交流によって生まれた両国間の絆(きずな)が、さらに強固なものになるよう、そして両国国民間の交流が一層進むよう期待しております。