×

米TPP離脱表明 関係深いカナダの現状

2017年6月2日 15:43
米TPP離脱表明 関係深いカナダの現状

 アメリカ・トランプ大統領がTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を表明したことを受け、11か国(日本、カナダ、オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)で、今後のTPPについて話し合いを行っている。アメリカとの関係が深く、大きな影響を受けることが懸念されるカナダの現状を取材した。

 先月30日に開かれたTPPに関する関係閣僚会議で、安倍首相は「スピード感をもって議論を前進させられるかどうか。関係閣僚が一丸となって11か国の議論を主導していただくようお願いします」と述べた。

 トランプ大統領の「離脱表明」を受け、アメリカ抜きでのTPPに向けて動く11か国。NNNはその1つ、カナダへ向かった。

 今年2月、最大の都市・トロントから車で約2時間の場所にあるティバートンにある牛農家。この牛舎では極寒の冬でも、運動のために屋外に牛を出す。

 この地域で育てる利点は、豊富な水分と地元で育つ穀物などで栄養満点な飼料を作れることだという。

 牛農家のスティーブ・エビ-さんは、育てた牛の主な輸出先・アメリカの変化に困惑していた。

 スティーブさん「牛生産者としてTPPが前進しないことに、間違いなく懸念はあります」

 さらにトランプ政権は、カナダとの自由貿易を定めたNAFTA(北米貿易自由協定)の見直しにも言及。不安が広がっている。

 スティーブさん「カナダはアメリカに、たくさんの牛を輸出しています。最悪の場合、売り上げの25%ぐらい落ちる可能性があります」

 カナダから輸出される牛肉の約8割はアメリカ向け(日本は約5%)で、大きな打撃を避けるため、アメリカ抜きのTPPに期待が高まっている。

 カナダの牛農家のケン・シャウスさん「アメリカがTPPを進めたくなければ、『アメリカ抜き』の方法を考えないといけない、TPPは、アメリカありでもなしでも進められるべき。カナダにも太平洋諸国にも、とても大事です」

 さらに、海外に多くを輸出している豚肉業界の関係者からは、こんな声も聞かれる。

 カナダポーク協会のギャリー・ストーディーさん「アメリカが抜けるのであれば、他のパートナーを含む新たなTPPが可能。それが、どのパートナーになるか、言及は早すぎるが、中国は選択肢」

 元は中国を外した経済圏を作り、揺さぶりをかける意味もあったTPP。しかし、アメリカの離脱を受け、輸出拡大のために「中国と組むべき」との意見まで出ている。

 一方で、課題も出てきている。先月開かれた11か国の閣僚会合では、結束を確認したものの、共同声明にはベトナムなど(アメリカの不参加に)慎重な国に配慮し、最終的には「アメリカの復帰を促す」という文言が入った。

 しかし、アメリカ通商代表部は「(TPP離脱の)決定がかわることはない。多国間より、2国間での協議に期待をしている」と、その可能性を真っ向から否定している。

 アメリカ抜きのTPPを期待する声があがる一方で、具体的な戦略は描けていないのが実情だ。