2024年五輪招致 ロスの戦略と課題
2020年東京オリンピック・パラリンピックの次の大会である2024年大会の開催地が、今年9月に開かれるIOC(国際オリンピック委員会)総会で決まる。開催地に立候補しているロサンゼルスが提案する「低コストの大会計画」を取材した。
1984年のロサンゼルス大会で4つの金メダルを獲得した“伝説の金メダリスト”カール・ルイスさん(55)。ロサンゼルスの大会招致委員会が作成したPRビデオに登場している。
カール・ルイス「私は今、将来オリンピックに出るかもしれない選手たちを指導している。(ロサンゼルスで)選手たちとオリンピックの瞬間を分かち合えることを願っている」
■会場の95%以上は“既存・仮設”
IOCの評価委員会は今月11日、33年前にカール・ルイスさんが駆け抜けた競技場を視察した。
この競技場は過去2回、オリンピック会場となっていて、招致委員会は3回目のオリンピックとなる2024年大会を招致できれば、この競技場を開会式の会場に使う計画だ。
既存の施設を再利用する計画は、スポーツ施設だけではない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の学生寮を「選手村」にして、1万人以上の選手を収容する計画もある。キャンパス内にはプールやテニスコートなど学生用のスポーツ施設が多くあり、選手の練習に最適の環境と判断したという。
ロサンゼルスの計画では、会場の95%以上が既にある施設か仮設施設を活用するとしている。費用を約7000億円に圧縮し、民間の資金で賄うとしている。
IOC評価委員会・バウマン委員長「ロサンゼルスの計画は、財務リスクが非常に低いと評価した」
■88%は支持、懸念は“渋滞”と…
3回目のオリンピック招致をロサンゼルスの市民はどう思っているのか。
「またオリンピックを開催できるなら、楽しみだよ」
「ロサンゼルスの経済に良いと期待している」
招致委員会によると、市民の88%がオリンピック招致を支持しているという。
その一方で、市民が最も懸念するのは交通渋滞の悪化だ。
「交通渋滞が一番の問題です。オリンピック開催はすばらしいけど…」
「大都市はどこも渋滞するけど、我慢するしかないですね」
“ロサンゼルス名物”とも言われる交通渋滞は、IOCの視察でも課題とされ、今後の対策が求められている。
もう1つ懸念がある。トランプ大統領と招致委員会の距離感だ。IOCの視察ではロサンゼルス市長が応対したものの、トランプ大統領との面会は行われなかった。
一方、ライバルのパリでは、今月16日にIOCが視察した際、就任したばかりのフランス・マクロン大統領が出迎え、国のトップの姿勢に差がついた。
ロサンゼルス招致委員会・サイクス最高経営責任者は「IOCとの面会では、トランプ政権から代表者が来て私たちの主張を後押しした。(招致に)トランプ政権から支援が得られると確信している」と話す。
IOCから高い評価を得ながらも、ロサンゼルスの大会招致には課題や不安が残る。