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前川氏「政権中枢の要請に逆らえない状況」

2017年5月25日 19:40
前川氏「政権中枢の要請に逆らえない状況」

 安倍首相の友人が理事長を務める「加計学園」による獣医学部の開設をめぐる問題で急展開が起きた。文科省の前川前次官が会見し「総理のご意向だと聞いている」などと記された文科省の内部文書とされるものについて「文書は確実に存在していた」と明言した。

■25日午後4時、文科省の前川前事務次官が都内で急遽記者会見を行った。

■前川氏「国家戦略特区における今治市の獣医学部の新設についてですね。私は文部科学省の側の事務方トップとして、その経緯に関わっていたということですが、その間における行政のあり方についてはですね、私はその当事者の立場の中で、非常に疑問を感じながら仕事をしていたということを申し上げざるを得ません」

■文科省の前の事務方トップが、政府の見解に真っ向から反発するという異例の会見となった。

■安倍首相の友人が理事長を務める学校法人加計学園をめぐり、これまで野党側は安倍首相が、友人のために最初から加計学園ありきで獣医学部の設置が認められるよう、働きかけを行ったのではないかと追及してきた。

■その根拠とされたのが、民進党が入手した文書。民進党側は、内閣府から文部科学省の担当者に「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向」などと獣医学部の開設を認めるよう迫ったとして追及してきた。

■これに対し政府側は19日、「文書ファイルの確認調査や関係職員への聞き取りの結果、該当する文書の存在を確認できなかった(松野文科相)」と、文書の存在を確認できなかったとしていた。しかし、25日の前川氏の会見では―

■「今回のこの文書をめぐっては、こういう発言を私がすることによって、非常に文科省の中にも混乱が生じるであろうと思っています」「しかし、あったものをなかったことにはできないということでですね、申し上げたいと思っております」

■そして、前川氏は「私が昨年の9月から10月にかけて、私、事務次官の立場で事務次官室で報告・相談を受けた際に、私が担当課である専門教育課から受け取った文書に間違いありません」と、文書は実際に存在したと強調した。

■地域を限定して規制を緩和する国家戦略特区で獣医学部の新設が認められたことについては―

■前川氏「極めて薄弱な根拠のもとで、規制緩和が行われたと。またそのことによって、公正公平であるべき行政のあり方がゆがめられたと私は認識しているわけであります」「政権の中枢からの意向、あるいは要請といったものに逆らえない、そういった状況があるというふうに思われます」

■一方、菅官房長官は25日午前の会見で前川氏について次のように非難していた。

■「(文科省の天下り問題で)当初は責任者として自ら辞める意向を全く示さず、地位に恋々としがみついておりましたけども、その後の天下り問題に対する世論からの極めて厳しい批判にさらされて、最終的に辞任された方であるとこのように承知しています」

■この菅官房長官の発言について前川氏は「私自身の処分に関してはですね、私自身お手盛りでやったわけではございません」「地位に恋々としたとか、あるいはじたばたしたとかっていうことは、私はなかったというふうに思っております」

■さらに、野党側が国会で説明するよう求めていることについては、前川氏は証人喚問に応じる姿勢をみせた。


【日本テレビ・伊佐治政治部長の見解】

 選挙で選ばれた政治家が、時に行政や官僚に対して強くものを言って、政治の方向付けをしていくのは政治主導の姿でもある。しかし、前川・前次官は今回、農水省や厚生労働省の(獣医の需要に関する将来の)予測を省く形で、行政が公平公正であるべき姿からゆがめられたと訴えている。

 重要な問題として、国家戦略特区の獣医学部の設置条件の変更によって、当初は加計学園とともに並んでいた京都産業大学が結果的に排除されていった経緯がある。これが不透明感を呼んでいる。

 当事者の前川・前元次官が「あったものをなかったものにはできない。文書はすぐに見つかるはずだ」と言っている限り、安倍内閣としても「怪文書のようなもの」「探しても確認できなかった」では済まされなくなってきた。国会での解明も必要になってきている。