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23区内大学の“定員規制”課題と問題点

2017年5月19日 17:11
23区内大学の“定員規制”課題と問題点

■都心の大学の“定員規制”

 東京23区の大学に通う学生の数は、全国の大学生の2割近くいる。その一方で、地方の大学は定員割れが相次いでいる。

 こうした事態を受け、政府は今月11日、「第6回 地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」を開催。“東京23区内にある大学の定員増加を認めない”という中間報告案を取りまとめた。


■地元大学への進学率 11県で2割未満

 2016年度、高校生の地元大学への進学率を見ると、東京では、都内の高校を出た学生の66%が都内の大学に通っている。

 一方、地方を見ると、11県(福島、茨城、長野、富山、岐阜、奈良、和歌山、鳥取、島根、香川、佐賀)で2割未満に落ち込んでいる。最も低いのは和歌山県の11%なので、10人中9人近い学生が地元を出て県外の大学に進学しているということになる。

 地方の学生たちの行き先は、特に東京23区内にある大学に集中していて、全国にいる約287万4000人の大学生(大学院生含む)の2割近くとなる約52万6000人が、23区内の大学に通っている計算になる。


■東京一極集中の問題点

 東京の大学を出た学生の多くは地元に戻らない傾向があるため、地元の企業が人材確保に苦戦している。また、地方大学の経営が立ち行かなくなると、地域に根差した特色ある研究が減少してしまうといった懸念もある。

 他方で、定員を超える学生を受け入れている東京の大学では、教員1人当たりの学生数が多く、例えば学生ごとに課題を発見させて個別に指導していく「アクティブラーニング」が行われにくいといった問題を指摘する声もある。

 こうした問題への具体的対策として、23区内の大学について、原則として定員の増加を認めないことなどが検討されている。また、入学者が定員を超えている大学については、その超過分に応じて補助金をカットするといった対策も段階的に実施されている。

 政府は来月に閣議決定する経済財政運営に関する「骨太の方針」に明記し、法的な枠組みも含めて検討するとしている。


■地方大学の魅力づくり

 この問題を解決するために、東京の大学に対する規制をいくら強化しても、問題の本質的な解決にはならない。それどころか、東京の大学に進学したいと考える学生の道を狭める結果になりかねない。

 問題は彼らがなぜ、東京の大学に行きたいと考えるのか、その理由を分析し、改善策を講ずることが大切で、若者を地元に残す対策を考えなければならない。

 例えば、地方の大学を卒業した若者が地元での就職で“圧倒的に有利”なのであれば、人材は残るかもしれない。また、本当にその地方にしかできない教育や研究が行われている、世界的に権威のある教授の授業が受けられるのであれば、地方にとどまる学生も増えるかもしれない。

 さらに、ネット回線を通じて都心の大学などと授業を双方向で受けられる「サテライト授業」を増やすことも必要だろう。

 いずれにしても、単なる規制強化ではなく、地方大学の魅力づくりに本腰を入れることが必要なのではないか。