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人にも感染“エキノコックス”防ぐには?

2017年5月12日 19:55
人にも感染“エキノコックス”防ぐには?

 動物園のテナガザルが「エキノコックス」よる感染症で、死んだ可能性が高いと報じられ、ネットで話題になっている。人にも感染するというエキノコックスの感染症とはどんなものなのか、防ぐにはどうしたらいいのだろうか。


■寄生虫でテングザルが死んだ

 北海道、円山動物園にいたメスのテナガザル「グレコ」。今月8日、グレコが死んだと動物園が発表した。寄生虫のエキノコックスに感染し、死んだ可能性が高いという。サルだけでなく人にも感染するという「エキノコックス」、いったいどんなものなのか。

 エキノコックスのニュースはツイッターでも大きく反応。「初めて存在知ったわ」「エキノコックス怖いね」「人も危ないのかな」との声があがった。


■人にも感染、自覚症状が出る頃には重症

 エキノコックスとはどんな虫なのか、東京の目黒寄生虫館へ向かった。館内に展示してあったのは標本を見ると、エキノコックスの体長3ミリから4ミリ。ネズミなどに寄生し、そのネズミを食べたキツネの中で成虫になる。キツネのフンと一緒に排出された卵によって、他の動物にも感染する可能性があるという。

 人間にも感染の恐れがあるエキノコックス。実際に年間20人ほどが毎年発症しているという。感染するとどうなるのだろうか。専門家は―

 「非常に自覚症状が少なくて、気がついた時にはかなり病気が進行しているということが多い」「発見が遅れると、死に至ってしまう場合もあります」(目黒寄生虫館・巖城研究室長)

 エキノコックスは、人の場合、10年~15年ほど体内に潜伏し、発症するまで症状がない。発症すると、肝機能障害に伴う“黄だん”などの症状が出る。しかし、症状が出た時には有効な治療薬もなく、切除するしかないという。


■主な感染源は「キタキツネ」だが―

 街で取材してみると、北海道出身の人たちがエキノコックスへの認識が高いようだ。それは、主な感染源が、北海道に生息する「キタキツネ」だからだ。しかし、北海道以外でも、2005年には埼玉県で、2014年には愛知県で犬のフンからエキノコックスの卵が検出されている。

 北海道以外で、身近な犬にも感染の恐れがあるエキノコックス。秋田県の動物園では対策が取られていた。飼育されていたのは、本州に生息している「ホンドギツネ」。ホンドギツネからはエキノコックスの感染例はこれまでないが、寄生虫には細心の注意を払っているという。ここでは、駆虫専用の薬剤をエサにわからないように含ませ、寄生虫を駆除する薬を年4回与えているそうだ。


■「卵が口から入る」と感染

 では、人への感染を防ぐにはどうしたらいいのだろうか。専門家は―

 「野外で遊んだり活動したりする時は手をしっかり洗うと」「山菜や野外にある草の実とかですねそういったものは、しっかり洗ったり加熱をしたりして食べると」(目黒寄生虫館・巖城研究室長)

 エキノコックスの卵は、約0.03ミリと小さく、肉眼では見えないがよく洗えば流せるという。人への感染のリスクがあるエキノコックスだが、感染しているキツネや犬のフンに含まれた卵が、なんらかの形で、口に入ることで人に感染する。人から人へは感染することはないという。


■予防のポイントは?

 潜伏期間が長く、10年から15年してから症状が出る。発症すると手術するしかないので予防が大事になる。予防するためには以下が重要になる。

・よく手を洗う
・野生のキツネに近づかない
・キツネの生息場所で川の水などを飲まない

 北海道の市町村などでは野生のキツネの感染率を下げるために、寄生虫を殺す薬を入れたエサを散布するなど観光客の安全を確保する取り組みも行っているという。