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解禁前にできること“日本版カジノ”の課題

2017年5月5日 18:39
解禁前にできること“日本版カジノ”の課題

■“日本版カジノ”の課題

 去年12月、「統合型リゾート施設(IR)整備推進法」が施行された。これを受け、国内でカジノを含む統合型リゾートを推進するために必要な法整備などを検討する会議が開かれた。


――統合型リゾートに、どうしてカジノが必要なのか。

 7年前にオープンし、今ではシンガポールの顔となった「マリーナベイ・サンズ」。3つのタワーの頂上にある街を一望できる展望プールが特徴的だ。

 「マリーナベイ・サンズ」の中心部にはカジノがあり、それを取り囲むようにホテルやショッピングモール、劇場やレストラン、国際会議場などの施設が配置されている。

 つまり「統合型リゾート」の大部分はカジノ以外の施設で、シンガポールの場合、カジノは施設全体の3%ほどを占めているにすぎない。


――ならば、カジノ以外の施設だけで十分な気もするが。

 実は、カジノ以外の施設は、造るのに莫大(ばくだい)な費用がかかる割には、それ自体では大きな収益が見込みにくいため、廃虚となるのを恐れ、なかなか設置に踏み切れない。

 そこでカジノをエンジンにし、そのもうけで他の施設を管理・運営するのが統合型リゾートだ。

 実際、シンガポールの場合、全体の3%ほどを占めるにすぎないカジノがリゾート全体の収益の約8割を稼いでいる。

 今後、日本にも巨大なリゾート施設ができるかもしれない。日本では今、少なくとも9つの地域が名乗りを上げている。(東京都 北海道の釧路市と苫小牧市、留寿都村 千葉市 神奈川県横浜市 和歌山市 大阪市 長崎県佐世保市 ※番組調べ)

 関係者によると、中でも有力なのが横浜市と大阪市、外国人に人気のある釧路市だという。

 釧路市は、自然が広がる阿寒湖を統合型リゾートの一部にする構想だ。市が考えたカジノルームのイメージ図を見ると、アイヌ文化をモチーフにし、アイヌの身近な神様である炎を部屋の中央に配置、さらに木を全面に使い、北海道の自然や文化を生かした作りを目指しているという。

 釧路市は現在も人口が減少しているが、市はカジノを起爆剤に観光客を増やしてさらに雇用を創出することで、人口減少に歯止めをかけたい狙いがある。

 地域活性化が期待される半面、課題もある。安倍首相は「“クリーンなカジノ”を含めた魅力ある日本型IRを作りたい」と明言している。

 そのためには「治安対策」「青少年の保護」「反社会的勢力の排除」「ギャンブル依存症対策」などの検討が不可欠だ。

 例えば、ギャンブル依存症について、与党は新たな法整備を検討しているが、カジノが誕生することで依存症になる人が増えるのではないかと懸念されている。


■カジノ解禁前にできること

 政府や与党は今後、対策を具体化する法案を作る予定だが、その前であっても、できることから着手することが必要だ。日本にはすでに競馬などの公営ギャンブルがあるし、パチンコ店も多数存在している。

 そのため、ギャンブル依存症が疑われる人がいるわけだが、これまで政府は十分な実態調査を行ってこなかった。

 例えばシンガポールは依存症専門の病院をつくるなど、国を挙げて対策を行っているが、こうした対策が効果を持つためには、日本におけるギャンブル依存症の実態を正確に把握することが先決だ。

 カジノの解禁に合わせて対策を始めるのではなく解禁前にできることを可能な限り前倒しして進めていくことが大切だと思う。