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抗がん剤延命効果どこまで?高齢者がん治療

2017年5月4日 19:15
抗がん剤延命効果どこまで?高齢者がん治療

 国民の2人に1人がかかり、2014年には約37万人が亡くなった「がん」。

 最新の調査では、高齢者の抗がん剤治療による効果について「75歳以上に関してはわからない。75歳未満は抗がん剤を使ったほうが(結果が)良かったということは言える」という指摘もある。

 超高齢化社会におけるがん治療のあり方とは。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。

 がん細胞は、大きくなったり転移したりして寿命を短くするが、抗がん剤はそういうことを止めようとする薬だ。

 ただ、がん細胞だけを攻撃するだけではなくて、健康な細胞も傷つけてしまう副作用が出ることもある。そのため、「高齢者は抗がん剤を使うことで体力や気力が落ちてしまうのではないか」という指摘もある。

 2007年から2008年に国立がん研究センターの中央病院を受診した75歳未満の末期肺がん患者186人の生存割合、生存期間のデータを見ると、抗がん剤を使っていない患者よりも、抗がん剤を使った患者のほうが、生存期間が少し長くなっているのがわかる。

 一方で、75歳以上の末期肺がん患者のデータを見ると、抗がん剤を使わなかった人と使った人の生存期間は大きく変わらないが、抗がん剤を使っていない人でも生存期間が40か月を超える人がいた。

 ただ、75歳以上の調査対象人数は19人と極めて少ないため、国立がん研究センターは「75歳以上の調査結果については、抗がん剤治療のあり・なしで生存期間に影響があったかどうかわからない」としている。

 国立がん研究センター中央病院・西田俊朗病院長「患者の数だけではなくて、元々非常に元気な人と非常に状態が悪い人とを比べたら、何もしなくても元気な人のほうが長生きしますよね。患者さんの背景がどうなっているか、本来合わせてやらないといけない。その辺はもう少し細かい解析を、症例数を増やしてやっていかなければいけない」

 今後、厚生労働省は患者さんの生活の質の改善などを含めた高齢者のがん患者についての研究を行っていく方針だという。

 年齢だけで線引きするのではなく、患者一人一人の状態によって延命効果があるのか、延命だけではなく生活の質が改善したかどうかがわかってくるとよい。

 大事なのはこういった研究によって、その人にあった治療法が見えてくること、最終的には患者さん本人や家族がいろいろな選択肢の中から治療法を選ぶことができるようになるといいと思う。

 仮に今後行われる大規模調査で、高齢になればなるほど抗がん剤治療の「延命効果があまりない」という結果が出た場合、吐き気や痛みといった副作用による体への負担を避けるため、抗がん剤治療をしないという選択肢も出てくるだろう。

 基本的にはがんが進行すると、痛みを和らげて生活の質を維持する「緩和治療」、がんの進行を抑えて影響を小さくする「抗がん剤治療」が並行して行われる。しかし、抗がん剤を使わないということになれば、緩和治療を中心に治療を進めるということになる。

 抗がん剤治療などの詳細な分析が進めば、効果的に治療を行うことができるようになっていく。ただ、患者さんはそれぞれ置かれた環境も違うし、治療に対する考え方も違う。

 患者一人一人が、いろいろな選択肢の中から自分にあった治療法を選ぶことができるようにすることが大切だと思う。