なぜ流通?どうやって防ぐ、偽造医薬品
■偽造医薬品の流通を防げ
厚生労働省は今月21日、製薬関連の協会や薬学の専門家などの有識者を集め、偽造医薬品の流通をどう防ぐかを考える検討会を始めた。なぜ、このような会議が開かれたのか。
C型肝炎治療薬「ハーボニー」の価格は現在、1錠約5万5000円。とても高価な薬だが、ハーボニーの偽造品が今年、奈良県の薬局チェーンで販売されていたことがわかった。奈良県だけでなく、東京都内でもハーボニーの偽造品が見つかっている。
厚労省などが成分を分析したところ、風邪薬の漢方薬や1粒20円ほどのサプリメントなどだったという。
「明らかに正規品と見た目が違う」などの理由で、購入した人は服用せずに済んだが、事態を重く見た厚労省が対策会議を開いた。
――なぜ偽造医薬品が流通してしまうのか。
薬は普通、製薬会社から取引のある卸売業者を介し、薬局に販売され、患者に処方される。
しかし、一方で医薬品の“転売ルート”も存在する。それには、現金で薬を買い取る“現金問屋”と呼ばれる業者が関わることがある。資金繰りのために現金が必要な薬局などにとっては、非常に便利な存在だ。
システムはこうだ。薬局などで余った薬は、期限が切れる前に現金問屋に転売する。この余分な医薬品の売買は、医薬品販売業の許可を得た者同士であれば、違法ではない。
しかし、奈良県内で今回見つかった偽造のハーボニーは、個人とみられる複数の男女が現金問屋の仕組みを悪用して現金問屋に偽物を買わせ、その後、複数の業者を経由して患者の元へ届いてしまった。
取材に対し、複数の現金問屋は「身元を確認せずに仕入れることは普通しない」と話しているが、今回の奈良県のケースでは、現金問屋側は薬を持ち込んだ男女が医薬品の販売許可を所持しているかなどの身元確認をせず、さらにウソの名前を記録として残していた。
厚労省はこうした点を重く見て今年2月、買い取りの際には必ず身元の確認をした上で、連絡先と合わせて記録するよう求める通知を出した。
最近はインターネットを通じて海外から薬を購入している人もいる。厚労省によると、インターネットを通じて海外から個人輸入されている医薬品は、多いものから順に「性機能増強」「育毛・養毛」「ダイエット関連」「美容関連」「睡眠鎮静」だという。
海外では医薬品として流通が認められているものもあるが、一方で偽造品も数多く確認されている。海外で作られている偽造医薬品は、決して衛生とは言えない環境で作られていることも多いという。
――偽造医薬品の流通はどうしたら止められるのか。
今回のポイントは「流通ルートの可視化」。自分が買ったり処方されたりした薬が、どのような流通ルートをたどってきたのか、これを確認できるような仕組み作りが大切だ。
宅配便では、自分の出した荷物が今、どこにあるのかが確認できる。これと同じように、例えば薬の識別番号を入力すれば、流通ルートがわかるような仕組みを作れないか検討を進めてほしいと思う。