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“ふるさと返礼品”困惑する楽器・家電の町

2017年4月24日 19:01
“ふるさと返礼品”困惑する楽器・家電の町

 「地元の特産品が受け取れる」などとして人気を集めている、ふるさと納税の「返礼品」について、総務省が出した通知に波紋が広がっている。「資産性の高い家電などは返礼品にそぐわない」という通知で、「家電の町」からは困惑の声も上がっている。

 長野県の南部に位置する人口約7万人の伊那市では、2015年度のふるさと納税の寄付金額が長野県内でトップ、昨年度は約72億円が集まった。

 伊那市では2015年度から、返礼品として液晶テレビやコードレス掃除機など多くの家電製品を採用。家電製品のうち市内の工場で製造する物もあるが、電器店などで作る組合を通じて調達することで地元が潤うという。

 人気を集めている、ふるさと納税の返礼品。しかし、総務省は「一部で返礼品競争が過熱しているという指摘があり、行き過ぎた競争が続けば制度への信頼を損なう」として、今月1日、各自治体に「返礼品の割合が寄付額の3割を超えている場合は速やかに3割以下にすること」などと通知を出した。

 また、プリペイドカードや商品券など金銭類似性の高い物、電化製品や電子機器など資産性の高い物は、地域への経済効果などにかかわらず、ふるさと納税の趣旨に反するとして、返礼品にしないように求めた。

 この通知を受け、伊那市では返礼品の割合を3割以下になるように見直したが、家電製品などは調達価格を10万円未満とする独自のルールを設けた。

 しかし、高市総務相は今月21日、伊那市の対応を名指しして批判した。

 高市総務相「今回の伊那市の対応については、通知の趣旨にそぐわないものと考えています。資産性の高い物として送付しないように、さらに理解を求めてまいります」

 これを受け、伊那市の白鳥市長は「運用方針を再度検討したい」とコメントしている。

 楽器作りが盛んな町でも困惑が広がっていた。静岡県の西部に位置する磐田市。市内には、楽器メーカーの河合楽器製作所やヤマハなどの工場が集まる「ものづくりの町」として知られている。

 「ものづくりの町」をPRするため、ギターやピアノ、サックスなどの工業製品を2015年度から返礼品として採用していて、寄付額は前年から8倍以上に跳ね上がったという(2014年度は約1億1663万円 2015年度は約9億7328万円)。

 しかし、総務省は今回、地元の経済効果などにかかわらず、楽器も資産性が高いとして返礼品にしないよう求めた。

 これに対し、磐田市は「地元の工業製品も特産品と同じような考えもありますし、磐田市としては、ふるさと納税の趣旨に沿った形でやってきていると思っていますが、磐田市としての考え方を伝えていきながら、今後、総務省の通達を受けてどのように見直していくか、時間をかけて検討していきたい」とコメントしている。