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米攻撃で…シリア内戦は一層泥沼化の恐れも

2017年4月9日 19:25

 アメリカのトランプ政権は7日、シリアでアサド政権が化学兵器による攻撃を行った対抗措置だとして、シリア国内の空軍基地に向けて巡航ミサイルを発射した。今回の攻撃でシリアの内戦はさらに複雑化すると思われるが、今後、どうなっていくのだろうか?エジプト・カイロ支局の天野英明支局長がリポート。

 今回の攻撃は主に2つの点で、内戦に深刻な影響を与えたといえると思う。まず1つは、関係改善の動きもあったロシアとアメリカの関係悪化につながること。アサド政権の後ろ盾のロシアと反体制派を支援してきたアメリカという二大大国が連携しない限り、シリアの和平は前に進まない。アサド政権側は去年12月、北部の大都市アレッポを完全制圧するなど、ロシアの支援を受けて軍事的に優位に立ち、良くも悪くも「政権側の勝利」というシナリオが見え始めていた時に、トランプ政権が「待った」をかけた形で、内戦の行方をさらに不透明化させたといえる。

 もう1つの影響は、内戦の当事者たちの対立意識をさらに際立たせたこと。劣勢に立っていた反体制派側は、今回の攻撃を歓迎し、ある幹部は私たちの取材に「挽回するチャンスとなった」、「継続的に攻撃してほしい」などと話していた。またアサド政権と敵対する「イスラム国」などの過激派組織にとっても、思わぬ“援護射撃”となった。今回の攻撃はあくまで限定的なもので、内戦の構図や力関係にまで影響を与えるかは分からないが、政権側と戦う当事者たちを心理的に勢いづかせたわけで、再び戦闘が激化し、内戦がさらに泥沼化する恐れもある。