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被災地に“モリウミアス”をつくった理由3

2017年3月23日 16:43
被災地に“モリウミアス”をつくった理由3

 「モリウミアス」代表・油井元太郎氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「実は高コストな廃校リフォーム 一番の苦労は“地元の心を残す”」。震災後、たった2年で廃校を再利用することができた“運命的な背景”とは。


■象徴としての場所に

――本来、新築の方がリフォームよりも安くできるはずが、高コストだけれどもあえて廃校を利用したと。この再利用には何か理由があったんですか?

 雄勝町は震災によって8割ぐらいが壊滅してしまったって言われているんです。それだけ大きな被害を受けた町の中に、今年で94年になる木造の古くてかわいらしい建物が残っています。

 ここはすずり石が日本で1番とれる町です。東京駅の屋根も実はすずり石なんですが、それと同じような屋根を持つ建物で、雄勝町にとっても貴重な場所だったんです。

 学校というのは常に地域の中心にありますよね。この廃校を地域の方々がこれからも地域の象徴と思ってもらえる場所になり得るなと。

 あとは、新しく来る子どもたちにとっても、そういう昔ながらの学校とか日本の原風景みたいなものを感じてもらえるんじゃないかなと思ったので、あえて新築のものを建てようという気はまったくなかったです。

 むしろ、これだけ象徴的な場所をいかに象徴的であり続けられるように改修するかというのが大きなポイントでしたね。あまりお金のことは考えてなかったです(笑)。


■震災から2年で再利用…運命的な背景

――再利用が可能だった背景には何があったのでしょうか?

 実は、この廃校自体が2002年に閉校してから、卒業生の親族が石巻市から買い取って大事に保管されていました。いわゆる“民間保有”の廃校だったんです。

 そういう背景もあって住民の方々も「震災があったし、これから地域の拠点として新しく生まれ変わるんだったら使ってください」という話になって、モリウミアスにつながっていった。

 震災から2年でこのプロジェクトをスタートさせているので、もしこれが石巻市の管轄だったら、まだまだ「復興をどうするか」というところで、行政のパワーではなかなか進めなかったかもしれないですね。そういう運命的な部分もあります。


■カタールとの縁にドラマあり

――資金集めには、海外に行かれたりなどのご苦労なさったと伺いました。どのような感じでしたか?

 これはすごく残念な話ではあるんですけども、やっぱり日本国内だけでは資金がちょっと集まらなくて、海外に出て…特にアメリカであったりとか、最終的にはカタールにつながったりという不思議なご縁をいただいてます。


――カタールといえば中東の国ですが、日本とあまり結びつきませんね。どうしてカタールだったんでしょうか。

 カタールの国王が、震災直後にご自身の資金で多額の寄付を日本にしていただいて、それを“カタールフレンドシップ基金”という名前で基金として東北のいろんなプロジェクトに分配されていたところに、僕らが飛び込んだという形です。

 これも最初は、実は公募で断られていて、最後の最後で本当にお金がなくなって困っていた時に再チャレンジしたらうまく通ったという、ちょっと不思議なご縁というか、いろんなドラマがあったエピソードのひとつですね。


――カタールの王様が日本にシンパシーを持つ理由というのは何ですか?

 やっぱり日本との石油の取引というのは、私が知る限りでも非常に大きいですし、そういう意味ではカタールから見ても、日本の災害には非常に意識を向けて応援したいと思っていただいたようですね。


――そしてもちろん国内でも、建築の方であったりとか、大手の企業の方であったりとかさまざまな協力があって成立したということですね。

 はい。