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人命守る「最後の砦」戦闘からどう守る?

2017年3月16日 19:21
人命守る「最後の砦」戦闘からどう守る?

■医療が犠牲に?

 諏訪中央病院・鎌田實名誉院長は先月末から今月にかけて、イラク北部・アルビルを訪れた。アルビルから約80キロ離れた場所に過激派組織「イスラム国」のイラクでの最大拠点・モスルがある。

 モスルでは今も、イラク軍による奪還作戦が行われている。今回はモスルの病院で働いていた医師から、戦闘の被害が病院にまで広がっているという話を聞いてきた。

 まず、鎌田さんが向かったのは、アルビルとモスルの間にあるハーゼルキャンプ。モスルからの避難民を受け入れていて、戦闘の巻き添えとなって傷ついた民間人が数多く詰めかけていた。

 そのため、キャンプにいる医師だけでは賄いきれず、約40キロ先のアルビルの病院に救急車で運ばれる患者がほとんどだ。


■「イスラム国」が医療機器を…

 この翌日、鎌田さんが支援するイラク各地の病院の医師が集まる「JIM-NET会議」が行われ、1か月前にモスルの病院から避難してきた医師が窮状を訴えた。

 モスルから避難してきたモハメド・アリ医師「『イスラム国』の戦闘員の手当てをさせられました。病院が戦闘員の集合場所となり、空爆の標的になりました」

 モハメド医師のいたイブンアシール病院は、モスルで医療の中心を担ってきた。しかし、病院のあった地域が「イスラム国」に支配され、戦闘に巻き込まれた。昨年末、病院も空爆されたという。

 さらに、モハメド医師は「とても悲しかったのは『イスラム国』が撤退する時、医療機器を盗んでいったこと、患者がいるのに病院に火を放っていったことです」と語る。

 「イスラム国」が病院に油をまいて火をつけたのは今年1月で、ベッドのある病棟は、ほとんど焼けてしまったという。

 その時の状況について、モハメド医師は「(アメリカ主導の)有志連合の戦闘機に狙われる可能性もあるし、空爆されれば『イスラム国』が反撃する可能性もあるので、恐怖の中で暮らしていました」と語った。

 そんな中でも、現在もモスルに残って、焼けた病院を再開させようとしている医師もいるという。医師たちによると、いま一番深刻なのは薬不足だという。


■型違いの点滴

 そこで、鎌田さんが代表を務めるNPO法人「JIM-NET」が急きょ、モハメド医師の働いていた病院へ薬を届けた。その病院では、厳しい状況を目の当たりにすることになった。

 病院の壁には、多くの銃弾の痕が見られた。また、病院が焼かれてしまったため、患者の処置が行われていたのは事務所の階段の踊り場、抗がん剤など薬の準備をしていたのは事務所の台所だった。

 さらに、血液製剤が足りないため緊急措置として、血液型がA型の女の子にO型の血小板の点滴が行われていた。血液型の違う血液というのは、決していいことではない。こうした状況からもわかるように、モスルでは医療の現場を守ることさえも難しい状況だ。


■最後の砦を守る

 病院は人命を守る「最後の砦」だ。現在、モスルでは、平和を取り戻すための戦闘が行われているが、その戦闘によって罪のない民間人が傷つき、命を守る病院までもが被害を受けている。

 1年前、モスルの西側にある放射線治療の病院から脱出してきたシャーバン医師。そこは放射線治療の病院で、放射線を漏らさないようにするのに鉛が張られていた頑丈な部屋があったため、「イスラム国」に占拠されてしまったという。

 よりによって「イスラム国」は病院の医師や患者を排除して戦闘に利用している。これは許されることではない。少なくとも「最後の砦」を守るため、これからも薬の提供など病院を守る支援を続けていきたいと思う。