×

アレッポ取材“廃虚の街”で人々の暮らしは

2017年3月2日 18:24
アレッポ取材“廃虚の街”で人々の暮らしは

 中東・シリアで内戦が始まってから、3月で丸6年となる。過激派組織「イスラム国」など様々な勢力が入り乱れ、戦闘はいまだ続いているが、アサド政権側が最近制圧した最大の激戦地・北部のアレッポにNNNの取材班が入った。天野英明記者が現地から中継で伝える。

     ◇

 アレッポの旧市街は3か月ほど前まで戦闘の最前線で、アレッポ城は政権側の支配地域だった。そして私たちがいるエリアは反体制派が支配していた。原形が全くわからないほどに戦闘で破壊された建物が目につく。

 商店街だったという場所の壁には、弾痕が無数に残されている。この街が自然災害などではなく、内戦という人災によって破壊されたということがわかる。

 水も電気もなく壊滅的な状況ではあるが、旧市街や東アレッポでは、かろうじて残っている建物で暮らしている人もいる。路地の奥には小学校があり、通りには子どもの姿が見える。先月再開されたばかりだということで、周辺に住む子どもたちが戻ってきた。

 壊滅的な状況ではあるが、商店ではお菓子も扱っている。店主に聞くと、もともと牛乳店だったということだが、かつての客がほとんどいなくなったため、小学校が再開されたことを受けて、子どものためにお菓子を扱うことにしたそうだ。

     ◇

 なぜここまで内戦は激しくなっているのか。それは、この内戦に国内外の様々な勢力が関わっていることがあげられる。

 市内にはアサド大統領のポスターが無数に貼られているが、大統領を支援するロシアやイラン、反対に退陣を求めるアメリカなど、様々な国々がこの内戦に介入している。

 アレッポではロシアの存在を強く感じる。私たちの取材に同行するシリア情報省の担当者からは、ロシア兵による医療支援現場の撮影も提案された。ロシアの強引な内戦介入に対する国際的な批判をかわす狙いもあるとみられる。

 「ロシアとイランが我々を応援しなかったら国がつぶれたかもしれない」-アレッポの市民からは、こうした外国の介入に対する複雑な心境もうかがい知ることができた。

     ◇

 「世界の縮図」ともいわれるシリア内戦だが、その犠牲者ともいえるアレッポの人々は翻弄(ほんろう)され続けている。ある市民は「私たちは世界の戦争に巻き込まれた被害者だ」と話していた。

 シリア国内の勢力だけでなく、国際社会全体が現実にしっかりと目を向けて和平実現に向けて動かない限り、この内戦が終わることはない。