×

笑顔のために…女性の健康守る、現状と対策

2017年2月28日 18:09
笑顔のために…女性の健康守る、現状と対策

■健康、気にしてる?

 厚生労働省などは3月1日から8日までを「女性の健康週間」と定め、女性の生涯を通じた健康づくりを推進している。

 女性の健康を守ることは、社会全体の問題だ。実際、女性が病気になって会社を休んだり、仕事がはかどらなくなったりすると、社会に大きな損失が出るという調査がある。

 日本医療政策機構によると、いま働く女性は約2500万人。このうち、婦人科系の病気にかかっている割合は約17%と言われていて、病気などを理由に仕事を休んだり、仕事の効率が落ちたりすると、1年間に計4兆9500億円の生産性が失われるという。

 さらには、医療費も1人あたり年間33万円ほどかかることから、合計で6兆3700億円もの損失が生まれるという試算になっている。


■女性の活躍阻む「更年期障害」

 婦人科系の病気とは女性特有の病気のことで、乳がんや子宮頸(けい)がん、子宮内膜症などを指しているが、特にいま、女性の活躍を阻む問題として挙げられているのが「更年期障害」だ。

 というのも、約30年前に男女雇用機会均等法ができた当時、働き始めた女性がいま、更年期を迎え、その対策が不可欠になってきている。

 更年期とは、月経が終わる前と後の約5年ずつを指す。平均的に45~55歳の女性が女性ホルモンの分泌が低下することで顔がほてったり、息切れや動悸(どうき)がしたりと、様々な症状に悩まされる。

 ただ、その世代になると、仕事でも重要なポジションに就くこともあるため、なかなか休みづらい。それだけに、企業も女性の健康についてサポートしていくことが大切だ。

 IT企業の日立ソリューションズでは今年初めて、女性社員を対象に、産婦人科の医師を招いて女性の健康に関する講演会を行った。

 講演会を企画した日立ソリューションズ労務部・小嶋美代子さんは「これまで男性中心の中で、女性は働き方や考え方を男性に合わせて働いてきた。女性が健康で働ければ、会社の発展にもつながる」と話していた。

 一方で、病気は自覚できるものばかりではない。例えば東京都は、子宮頸がん検診の大切さを呼びかけるパンフレットを配っているが、がん検診に行くなど自分で体をケアする意識を持つことが大切だ。


■まだまだ低い乳がん検診率

 ところが乳がんの検診率(OECD調査 2015年)を見ると、アメリカが84.5%なのに対し、日本は42.1%で、婦人科への敷居がまだまだ高いのが現実だ。

 検診率を上げるためには、どうすればいいのか。安倍内閣で“女性の活躍”などを担当している内閣官房参与で慶応義塾大学の吉村泰典名誉教授は次のように話す。

 吉村名誉教授「中学校、高校の教育がきわめて大事なこと。教育を通して産婦人科の垣根を低くしていくことが大事。それが女性の健康、生涯の健康につながる」

 また、垣根を低くするため、今月26日、産婦人科医約150人を集めた日本産科婦人科学会の研修会も開かれた。

 これまで産婦人科と言えば、妊娠・出産などがメーンと考えられがちだったが、女性の年齢に応じて、生涯を通じた健康管理を行える医師の育成も進められている。

 かかりつけ医のように、それぞれのライフスタイルにあった相談ができるお医者さんがいると安心だろう。


■みんなの笑顔のために

 女性が元気でいることで、その周りの男性や子ども、家族や仕事仲間も生き生きと暮らしやすい。その笑顔のためにも、女性自ら健康に関する知識を増やし、周りもそれをサポートしていく社会としたいものだ。