トランプ政権:発足1か月で見えた外交課題
アメリカのトランプ政権が発足して1か月がたった。ペンス副大統領ら閣僚が国際会議に初めて出席するなど外交も本格化しているが、早くも課題が見えている。
■国際会議デビューしたティラーソン氏
先週、ドイツで国際会議デビューしたアメリカのティラーソン国務長官。注目はロシアとの初めての会談だった。
トランプ大統領は先月27日、「ロシアとプーチン大統領について、良いとも悪いとも言えない。まだ彼のことをよく知らないからだ。良い関係を結べることを期待している」と述べ、ロシアとの関係改善を主張した。
しかし、政権発足後、1か月もしないうちに大統領補佐官だったフリン氏が、ロシアと不適切な協議を行ったとして辞任に追い込まれた。
ティラーソン国務長官自身もロシアと太いパイプがある。就任直前まで石油大手「エクソンモービル社」の最高経営責任者を務め、ロシアの石油会社と取引を行い、プーチン大統領からロシアとの友好関係の発展に貢献をした人を対象とした「友好勲章」を贈られた。
■ウクライナ問題で厳しい姿勢も
トランプ政権とロシアとの関係に焦点が当たる中、今月16日に行われた初の米露外相会談。過激派組織「イスラム国」の壊滅などで協力を進めることで一致したが、ウクライナ問題ではロシアに対し、緊張緩和につながる行動を求めるなど厳しい姿勢も見せた。
「意見が一致しない分野においては、アメリカは自国と同盟国の利益と価値観を守っていく」―ティラーソン国務長官は記者からの質問は受けず、短い声明を読み上げるにとどまり、アメリカがロシアとの関係に神経をとがらせていることも垣間見えた。
今後、どのようにロシアと向き合うのか。アメリカ国務省の元高官は、こう指摘する。
ズムワルト元国務次官補代理「ティラーソン国務長官がロシアとの関係を改善できることを望むが、それはある程度、ロシアの態度にかかっている。アメリカのロシア政策は、ヨーロッパの同盟国の影響を受けることになる」
■欧州との信頼醸成は?
台頭するロシアへの対応など安全保障上、アメリカにとって重要なのが、ヨーロッパの同盟国との連携だ。
しかし、トランプ大統領は「我々が守っているNATO(北大西洋条約機構)加盟国の多くが裕福なのに、(防衛費の)負担をしていない」などとNATO加盟国への批判を繰り返し、ヨーロッパでは不信感が高まっている。
先週、ドイツを訪問したペンス副大統領は、この不信感を払拭する役目を負った。ミュンヘン郊外のユダヤ人収容所の跡地にある教会を訪れ、地元の人たちと礼拝を行った。アメリカ軍が解放した収容所を訪れることで、両国の絆をアピールした形だ。
また、ペンス副大統領は初めての国際会議の場でも「トランプ大統領にかわり、保証したい。アメリカはNATOを強く支持し、断固として同盟国への責任を果たしていく」と述べ、NATOへの支持を強調した。
しかし、演説を聴いた人たちの受け止めは冷ややかだった。シンクタンクに勤めるトルコ人研究者は「副大統領は、ただヨーロッパが持つ不安や心配を落ち着かせるためだけに演説したように思う」と指摘する。
ヨーロッパの同盟国と、どのように信頼を醸成していくのか。トランプ政権は重い課題を抱えている。