“レアル追い詰めた”鹿島監督の組織作り4
鹿島アントラーズ監督・石井正忠氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「レアルを本気にさせた“鹿島の組織力”、必要なのはトップのハンドルさばき」。アントラーズを飛躍させた監督の言葉とは―
■リーダーが「方向性を示す」
――石井監督は以前から鹿島がタイトルを取れるのは、いい組織だからということをよくおっしゃっていますが、そのいい組織をつくるために必要なことは何でしょうか。
これは、先ほども言いましたけども、その上に立つ者、リーダーがまず方向性をしっかり示すということだと思いますね。あとは色々な部署で、いろいろな役割があると思うんですけど、そこの役割もひとつの方向に向けていくというところが、組織をつくる上で大事になってくると思っています。
――その一度は違う方向を向きかけたチームを一つの方向に向かせるために、具体的にされたことはあるんですか。
まずはチームのために、そのクラブのために何をしなければいけないかっていうところを私自身も示しましたし、もう一度選手も考えて欲しいと。そういうことを選手には問いかけましたね。
■試合の前にトロフィーの写真を撮った
――いい組織であっても、本来であれば、とても勝つのが難しいと言われている相手だったと思います。そういう試合の前にどんな言葉をかけられたんですか。
クラブワールドカップの一番最初のミーティングで言ったと思うんですが、まずは開催国である鹿島アントラーズとそこと対戦するオークランドシティ、この2チームしか4試合することはできないと(※1)。まず、その4試合を戦おうと。その中で最終目的は、4試合勝とうと。そういうのをまず示しました。そして、そのミーティングの最後に、クラブワールドカップのトロフィーを写真に写して、最後はこのトロフィーを取ろうよと。
※1 クラブワールドカップでは、シード枠のあるトーナメント方式が採用されているため、決勝に進むために必要な試合数は、チームによって異なっている。鹿島アントラーズは、この時、優勝するまでに4試合を勝つ必要があった。
――その終着点とか結末というのをまず見せて、そこへ気持ちを高ぶらせていたんですね。さて、実際の試合では、大健闘ではあったのですが、準優勝ということで、試合の後に会見で「悔しい」という石井監督の言葉が印象的だったんですけども、やはり悔しさが残りましたか。
そうですね。あの瞬間、記者会見の時には、試合でレフェリーのジャッジが、少しいろいろなことがあったので、ジャッジに対しても複雑な思いもありましたし、まずは自分たちの目標を達成できなかったので、悔しさというのも当然ありましたね。
■日本代表の監督は日本人でもいい
――その一方で、Jリーグの力を違う場で見せつけられたのではないかという旨のお話もされていると思うんですが、やはりそこは自信をもたれましたか。
そうですね。この大会で、決勝に進んだのも初めてですし、アジアのチームがこの決勝に進んだというのも初めてなので、Jリーグの高いレベルというのは、この試合で示せたんじゃないかと思いました。
――ここまでいろんなお話をお伺いしてきたんですが、改めてシーズンの途中で監督を交代されたり、いろいろなことがあった中で、これだけ強いチームができた要因はひと言で言うとなんでしょうか。
うーん、これは選手の能力はもちろんないとできないことなんですけど、本当にチームがひとつの方向を向いた一体感というのがあったからではないでしょうか。
――今季は最優秀監督賞も受賞されて、“日本人の監督で日本代表に”という話がもしかすると来るかもしれないですが、その場合はどうお考えですか。
それはそういう話があってから考えたいと思いますけれども(笑)。私自身は、ぜひ僕じゃなくても、現段階でも日本人の監督さんがやられてもいいんじゃないかなというふうには思ってますね。それで日本らしさというのがより発揮できるんじゃないかと思います。