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遺失物「電話一本」で受け取り、その背景は

2017年2月6日 18:32
遺失物「電話一本」で受け取り、その背景は

 「約15万件」―これは京急電鉄の「京急お忘れ物センター」に昨年、届けられた忘れ物の数だ。特に傘などの忘れ物は2万5000件近くあり、忘れ物の数が年々増えてきているという。

 中には「子ども用の自転車」「パネルヒーター」「チャイルドシート」「中身のない仏壇」が忘れられていたこともあったという。


■4月から電話一本で…

 こうした中、先週、忘れ物や落とし物についての取り扱いのルールを定めた遺失物法の施行規則が改正された。これまでは警察に受け取りに行かなくてはならなかったが、4月から電話一本で受け取れるようになる。

 駅で保管されているものは別だが、警察の場合、直接受け取りに行けばもちろんのこと、2007年以降はインターネット上で忘れ物を検索することが出来るようになっていて、郵送などで送ってもらうことは可能になっていた。

 ただ、そのためには、申請書をホームページからダウンロードして警察に送るなどの手続きが必要だった。これが、遠くに住んでいてやむを得ない場合などは電話一本で可能になる。


■増え続ける拾得物

 こうした対応を取ることになった背景には、忘れ物が増え続けている現状がある。

 警察庁によると、全国の拾得物は2015年には約1900万件となり、2006年と比べると1200万件近く増えている。

 一方で、忘れ物を探そうとする人が出す遺失届の数は拾得物に比べてあまり増えていない。(2006年は約350万 2015年は約440万)

 拾得物が持ち主の元へ返された割合を見ると、「運転免許証」は91.9%、「携帯電話」が82.4%と、「これがないと困ってしまう」というものは高い割合で返されている。

 これに対し、「ハンカチ」は1.6%、「傘」はたったの1%となっている。ハンカチや傘の場合、よほど思い出があるものじゃなければ、届け出るのもおっくうになってしまうかもしれない。

 こうした現状を受け、警察では今年4月から電話での手続きだけでも、忘れ物の形や場所などを説明して本人と確認されれば、着払いで自宅などへ送り返してくれることになった。警察庁の担当者は「手続きを簡単にすることで、少しでも多く持ち主の元に返したい」と話している。


■遺失物センターの拡張工事も

 こうした対策が取られる一方で、忘れ物の保管場所を確保する動きもある。

 東京を管轄する警視庁の遺失物センターでは、700平方メートルとテニスコート3面ほどの保管庫が満杯になる時もあるという。雨の日には1日で約3300本の傘が届くということで、実はいま、拡張工事が行われているという。

 一方、内閣府が昨年行ったアンケートによると、傘などの遺失物について、「2週間か、それより短い期間で廃棄や売却処分してよい」と答えた人が7割以上だった。

 これまで持ち主の感情などを考えて平均3か月は保管していたが、警察庁では今後、忘れ物が届けられることが多い警察署などに2週間程度での処分を促していくとしている。


■使い続ける

 大量消費社会と言われる現在、使い捨てたり安いものをたくさん買ってなくしても「まぁいいや」と思ったりしてしまうことも多いかもしれない。しかし、保管にもコストがかかることを念頭に置いて1つのものを使い続けることも大切にしたいものだ。