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「国民の権利」重視、『五日市憲法草案』

2017年1月14日 20:35
「国民の権利」重視、『五日市憲法草案』

 シリーズ“記憶”をつなぐ小さな展示館。日テレNEWS24では、戦争、震災などの記憶を風化させない取り組みをシリーズで紹介している。

 130年以上前の明治時代に「国民の権利」を盛り込んだ現在の憲法に近い憲法案を作った人達がいた。その「五日市憲法草案」は、東京・あきる野市に今も残され、東京都の有形文化財に指定されている。

 さかのぼること『大日本帝国憲法』制定前。憲法の制定や国会の設立を求める「自由民権運動」が高まる中、民間の人たちにより作られた憲法試案のひとつ。

 あきる野市教育委員会・関根輝雄さん「まず条文が204条からなるということで、非常に長い条文を持っているということが特徴です。さらに国民の権利の内容を多数盛り込んでいまして、現在の憲法にも相通ずる点があるのが特徴のひとつです」

 『公法』『立法権』『司法権』など5つの項目について、204条と細かく条文が定められていた。当時作られた民間の憲法試案の中でも、非常に条文が多いことが特徴。さらに大きな特徴として、「基本的人権の保障」については細かく定められていて、明治初期としては、とても民主的な内容の「憲法草案」になっている。

 憲法草案は現在の宮城県栗原市出身で、当時、五日市で学校の教員をしていた千葉卓三郎氏が中心となり作成。憲法草案は昭和43年に見つかった。当時の五日市町深沢の土蔵の中にあった。

 憲法草案の全ての内容は、五日市地域を中心に市内の歴史・民俗・自然を紹介する「五日市郷土館」で複写が展示されている。このほか、千葉卓三郎氏に援助をしていた名主の深沢名生・権八親子や地域の学習団体『五日市学芸講談会』の当時の資料など、憲法草案作成にかかわった人や団体に関する資料も展示されている。

 2013年1月には天皇皇后両陛下も訪れ、後日、皇后さまは「深く感銘を覚えた」と思いをつづられた。

 あきる野市教育委員会・関根輝雄さん「市民にとっては、これだけの憲法草案ということで、宝と思っていただいていると思います」

 材木や絹織物で栄えた当時の五日市では、裕福な商人や農民らが欧米などの新しい文化への関心を高め、情報を集めていた。そんな土壌が、山あいの地域から「国民の権利」を重視した『憲法』を生んだのかもしれない。


 五日市郷土館は火曜・水曜・祝日が休館日。水曜が祝日の時は、木曜も休館。