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iPS細胞実用化に向け研究加速

2017年1月3日 20:19

 世界で初めて行われたiPS細胞のヒトへの手術から約2年。今年は2例目の手術が行われる見通しで、iPS細胞の実用化に向け研究が加速する。

 iPS細胞は、2006年に京都大学の山中伸弥教授らのグループが初めて作った「多能性幹細胞」。皮膚や血液の細胞をもとに、体のほぼすべての部分の細胞を作り出すことができるもので、再生医療の実現のために重要な役割を果たすと期待されている。

 2014年9月には、神戸市にある先端医療センター病院で、世界で初めてiPS細胞から作られた組織を目の難病「加齢黄斑変性」の患者の網膜に移植する手術が行われた。これまでに、安全性に問題は確認されていないという。この手術では、患者本人の皮膚からiPS細胞を作製し、網膜細胞に変化させたシートを移植した。

 世界で初めての手術から約2年。今年、2例目となる移植手術が、1例目と同じ「加齢黄斑変性」の患者に対し、臨床研究として行われる見通し。患者本人から移植のためのiPS細胞を作ると費用も時間もかかるため、2例目では、あらかじめ他人の細胞から作ったiPS細胞を使い、液体状にした網膜細胞を目に移植するという。早ければ今年春にも実施される見通し。

 また、今年はiPS細胞を使ったヒトへの応用はさらに分野を拡大。大阪大学の澤芳樹教授らのチームはiPS細胞を使って重い心臓病の治療を目指す研究を進めている。この治療方法は、iPS細胞を心臓の筋肉の細胞に変化させてシート状の「心筋シート」を作製。その生きたシートを重い心臓病患者の心臓に貼り付けて、心臓と一体化させ、心臓の機能を回復させようというもの。すでにヒトの細胞をもとに作られたiPS細胞で「心筋シート」を作製していて、動物を使った実験を通して、安全性と効果の確認を繰り返し行っているという。研究グループは今年夏にも実際に患者への移植をする臨床研究の申請を行う予定。

 今年以降は、心臓の他にもパーキンソン病や脊髄損傷について、ヒトでの臨床研究が次々と申請される見込みで、iPS細胞による再生医療が期待されている。