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「追い風」に乗れ!2017年日銀金融政策

2017年1月2日 21:36
「追い風」に乗れ!2017年日銀金融政策

 2016年は、マイナス金利政策の導入、金利を目標にした緩和策への移行と、かつてない金融政策を繰り出した日本銀行。日本経済のデフレからの脱却をより確実なものにするため、日銀は今年どう動くのか?

 ■「逆風」が「追い風」に

 年明け早々に上海の株式相場が下落したり、6月下旬にイギリス国民投票でEU離脱の方針が示されたり、2016年前半は、世界経済に対する悲観的な見方が広がった。しかし、年の後半になって、経済指標は次々に改善。アメリカ・トランプ新政権の政策への期待感も相まって、世界経済は上向きつつある。日銀は12月、1年7か月ぶりに景気判断を一段引き上げ、黒田総裁は日本経済について「これまではいわばグローバル経済の“逆風”の中で奮闘してきたが、世界経済が新たなフェーズに入る中で、これからは“追い風”を受けてさらに前進していくことが可能な状況」と述べた。

 ■カギは「賃上げ」

 「追い風」に乗り、日本経済がさらに前進していくためカギを握るのは、賃金の上昇だ。賃金や雇用者所得が持続的に上昇すれば、個人消費も増加し、物価が上がる経済の好循環が実現し、デフレからの脱却がより確実なものになる。12月の日銀短観では、特に中小企業の人手不足が深刻で、1992年以来の水準にまで落ち込んでいることが分かった。今後、労働力を確保するため、賃上げをする動きが出るとみられているが、その動きがどこまで広がるのか、2017年の「春闘」が注目される。

 ■今年日銀の政策は…。

 2016年、日銀は1月にマイナス金利政策の導入を決定。9月にはそのマイナス金利政策も含めたこれまでの金融緩和策について「総括的な検証」を行い、長期金利と短期金利をそれぞれ操作する、新たな枠組みへの移行を決めた。当初は長期金利を操作できるのか懐疑的な見方もあったが、市場に大きな混乱は見られず、これまでのところ落ち着きを保っている。今後、日銀がさらなる緩和を行うとすれば、マイナス金利の幅を拡大させるなどいくつかの手段が考えられる。しかし、いずれもそう簡単に切れるカードではなさそうだ。特にマイナス金利の幅を拡大することについては、貸し出しで利益を出しにくくなる金融機関からの反発が大きい。2017年の日銀は、春闘を中心とした企業の賃上げの状況と、アメリカの利上げペースを見極めながら、慎重な政策運営を続ける1年になりそうだ。