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難民排斥の動き、オーストリアでいま何が?

2016年12月23日 16:08
難民排斥の動き、オーストリアでいま何が?

 大勢の難民を受け入れているオーストリアで今月、大統領選挙が行われた。難民排斥を訴えた極右の候補が敗れはしたものの、5割近い票を獲得。いま、オーストリアで何が起きているのか。

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 オーストリア東部のグーテンシュタイン村。シリア人のムスタファさん夫婦は、この村のはずれにある建物に滞在している。2人は去年、戦闘が激化したシリアのアレッポを逃れ、トルコからゴムボートで海を渡り、ギリシャの島に上陸。オーストリアへたどり着いたという。

 取材した私たちをシリアのケーキでもてなしてくれた2人。ムスタファさんの妻は「シリアでは仕事も勉強も今のようにはできませんでした」と話す。2人はオーストリアでの難民申請が認められ、現在は手続きを進めているところだ。

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 人口1300人余りのこの村は、難民を68人受け入れている。難民たちはドイツ社会に慣れるために義務を課せられている。

 難民を支援する住民「政府によるドイツ語の講座があります。教師が村に来て、難民たちに教えています」

 難民たちは、無料で滞在できるかわりに、ときには掃除を手伝うなどしてうまく共存しているという。

 難民を支援する住民「村人たちも難民たちと実際に触れあうと(難民のことを)理解します」

 一方で、ソマリアから逃れて来た男性はこんな話をしてくれた。

 「人は同じではありません」「(村の外では)難民にトラブルを起こす人もいる。私たちを中傷したり」

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 難民たちの移動ルートにあたるオーストリアは、人道的な配慮から去年、人口比ではドイツよりも多くの難民たちを受け入れた。ウィーンでは多くの難民たちの姿を目にすることができる。しかしその反動から、反発が広がりつつある。

 今年6月にはウィーンで難民排斥を訴えるデモも起きた。さらに、11月には、「オーストリアの母」「女帝」と呼ばれたマリア・テレジアの像にイスラム教徒の女性が着用するブルカがかけられた。イスラム系の難民たちが増えすぎるとこうなる、と極右団体が行った抗議活動だった。

 極右団体幹部「オーストリアのイスラム化に反対していることを示したかった。今何かをしなければ、将来がどうなるかを示したかった」

 難民問題は、今月行われたオーストリア大統領選挙でも焦点となった。難民排斥を訴えた極右・自由党のホーファー氏は、敗れはしたものの5割近い票を集めた。難民への反発は確実に広がっているのだ。

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 大勢の難民を受け入れているグーテンシュタイン村も例外ではない。難民を支援する住民は「私たちにとっては問題ないが、そう思わない人もいます」と話す。

 難民を支援する住民「難民の家族は月に1500ユーロの手当をもらえます。この村の家庭の収入よりも多く、嫉妬する人もいます」「国を逃れた難民がどんな厳しい状況なのか理解できないのです」

 祖国を逃れ、厳しい旅の果てにようやくヨーロッパにたどり着いた難民たち。しかし、そのヨーロッパの変化は、彼らの将来に暗い影を落としつつある。