×

クリスマス いつから日本に定着した?

2016年12月21日 19:57
クリスマス いつから日本に定着した?

 今週末はクリスマス。日本ではすっかり定着したイベントになったが、そもそも、このクリスマスは、どんなふうに日本文化の中に根付いたのだろうか。

     ◇

 日本の物語に初めて登場するサンタクロースは明治33年、子ども向け教材に出てくる挿絵だといわれている。仙人っぽい雰囲気もあるが、手にはツリーを持っていて、連れているのはトナカイではなくロバ。プレゼントもたくさん持っている。

 物語の内容は「8歳の少年が、かつて旅人のおじいさんを助けて、そのおじいさんがクリスマスイブの夜にたくさんのプレゼントを持って少年のもとにやってくる」というもの。話の中で、おじいさんは少年に宛てて手紙を書いている。その差出人の名前が―

 「北國の老爺、三太九郎」

 三太九郎は、サンタクロースのあて字だ。「北国のおやじ」という表現も独特だ。実は、この頃、日本ではサンタさんはすでに親しまれていたようで、明治39年のクリスマスイブの新聞広告にはサンタが登場している。石鹸の広告だが、当時はクリスマスプレゼントに買う人もいたかもしれない。高級品だったのだろう。

     ◇

 当時の文化や庶民の暮らしなどを書いた書物によれば、クリスマスは、はじめは、キリスト教徒だけで行う行事だったが、明治21年頃、クリスマスカードなどクリスマス用品が輸入されはじめると、一般の人々にも広まり、明治35年頃にはすでに年中行事として定着していたという。

 この時代は、日本が国を挙げて欧米列強に追いつこう、としていた時代でもあった。もとは外国の行事だったものが浸透していくというのは、今の「ハロウィーン」に近かったのかもしれない。

     ◇

 同じ頃、輸入食品などを販売する「明治屋」がはじめたのが、銀座のお店のクリスマス飾りだ。イギリス留学経験のある明治屋の創業者が、宣伝広告に使おうと日本に持ち込んだもので、今のクリスマスの華やかな飾り付けの先駆けになった。

 昭和5年の明治屋の写真には「MERRY XMAS」の飾り付けがある。そして、その上に掲げられたバルーンには「大売り出し」との文字が書いてある。つまり、今でいうクリスマスセールだ。百貨店などのクリスマス商戦もこの頃にはじまり、大正から昭和にかけて盛んになった。

     ◇

 戦後の映像を見ると、クリスマスの時期にプレゼントを買い求める人々の様子は、今以上に活気ある。そして、クリスマスケーキを買い求める人々も楽しげだ。

 実はクリスマスケーキの歴史も古い。お菓子メーカーの不二家が明治43年に販売したクリスマスケーキを再現したものがある。イチゴはなく、飾り付けは銀のつぶつぶだけだ。当時は、ハウス栽培が進んでいないので冬はイチゴが使えなかった。

 それが昭和に入るとデコレーションも華やかになっていく。高度成長期時代のクリスマスケーキの写真を見ると1000円とあるが、今でいうと3700円ほどになる。少し奮発して買った人もいたかもしれない。

クリスマスケーキが普及した背景には、戦時中の砂糖や小麦粉の統制が戦後になって解除されたことがあり、さらに昭和40年代に冷蔵庫が普及すると生クリームを使った今のショートケーキに定番が変わっていった。

 80年代後半から90年代初頭にかけてのバブル期には、恋人や奥さんにあげるものだろうか、高価な指輪や宝石を買い求める人でにぎわった時代もあった。歴史をひもとくとクリスマスもいっそう味わい深い。

     ◇

 今日のポイントは「お待ちかね」。大正15年の雑誌の記事には、子どもたちが店頭でプレゼントを買う写真の横に「メーリークリスマス」とあり、こんな文章が添えられている。

 「可愛い、嬢ちやん、坊ッちやん達はどんなに楽しんでお待兼ねだつたでせう」

 クリスマスを楽しみに待つ子どもたち、大人もウキウキするような楽しい気持ちは時代をこえて変わらないものだ。